復代理・無権代理・表見代理でおさえておきたいポイント

復代理のポイント

信用できる人に代理権を与えたけど、代理人にもしものことがあったりした場合、本人は契約ができずに都合が悪くなります。本人はどうしたらいいか悩んでしまうわけですが、代理人が別の人に代理権を与えて自分の代わりとすればいいだけです。

別の代理人が最初の代理人の代わりに契約をすることは認められており、これを復代理制度といいます。

復代理人に代理権を与える(復代理人を選任する)には条件があるのですが、これは代理の種類(委任による代理と法定代理)で変わります。

委任による代理の場合は、契約者本人の許諾かやむ得ない理由のいずれかが条件になります。委任は本来「あなただからお願いできる」として代理を頼んでいるわけですから、本人の知らないところで勝手に違う人を代理人にはできません。やむをえない事情というのは、病気や事故などが考えられます。

法定代理の場合は、表現は悪いですが仕方なく代理人になっているケースもあります。ですから、いつでも自由に復代理人を選任することが可能です。

ただし、自由であるがゆえに復代理人の行為について代理人が負う責任は委任の場合よりも重くなります。具体的には、委任による代理の場合は、選任監督責任だけが責任として問われるのに対して、法定代理だと、復代理人の行為に関するすべての責任を代理人が負う必要があります。

例外として、自己都合で勝手に復代理人を選んだわけではない(やむをえない事情がある)場合は、選任監督責任だけとなります。


復代理はここも大事

その他、復代理で注意しておきたいのは、復代理人(後から代理人になった人)の契約は本人に帰属する点です。「最初の代理人に不都合があってその人の代りになるから、復代理人は代理人の代わり」と勘違いしてはいけません。この解釈だと、仮に復代理人が契約したら代理人が契約者となってしまいます。

迷った時は代理の基本原則に戻って、復代理人であったとしても本人が契約したものとみなすと覚えておきましょう。

復代理制度によって代理権を与えられた人が複数いる状態はありえるわけですから、復代理人が選ばれても代理人の代理権は消滅しません。

また、復代理人はあくまで二番手ですし代理人から選ばれた人のため、最初の代理人の代理権以上のことはできないのです。そして、最初の代理人の代理権が消滅した場合は、同じタイミングで復代理人の代理権も消滅します。

代理人の代理権が消滅する要因を覚えておき、復代理人の代理権も自動で消えると覚えておくとわかりやすいと思います。

無権代理のポイント

何の代理権もないのに代理人のような顔で契約した場合は無権代理にあたります。当然の話ともいえますが、無権代理による契約は本人にとっては無効です。

しかし、無権代理人が勝手にした契約が、本人にとってすごくおいしい話だったりするケースもありえるので、本人の追認があれば契約も有効となるのです。本人が追認をすると契約は当初から有効になる点は、法定代理人の追認権と同じ考え方が通用します。

また、追認は本来契約の相手方にするものですが、代理人に対して追認をして相手がそれを知れば認められます。ようするに勝手に契約してきた無権代理人に「いい話だからOK」とだけ言ってもダメですが、相手が「OKって言ってる」とわかればそれでいいわけです。

ところで、無権代理で契約させられた相手としては、契約が無効になるよりは有効になるほうがうれしいものです。ですから、本人に対して追認するかの答えを催告できます。この催告は無権代理であることを事前に知っていてもできるのが難しい点です。

なお、本人からの答えがない場合は追認を拒絶したとみなされます。

相手が無権代理であることを知らない(善意)場合は、催告だけでなく契約の取り消しも可能です。追認があると取り消せないので、取消権は本人からの追認がない場合に限られます。

本人が無権代理人に対して追認しても、相手に伝わらなければ追認がないのと同じと解釈しておきましょう。

せっかくの契約を取り消したくもないけど追認もされない場合、事情を知らない相手は無権代理人の勝手な行動に振り回されることになり、おもしろくありません。ですから、相手方は取消権を使えるのと同じタイミング(追認がない間)で、無権代理人に対して契約の履行あるいは損害賠償を請求できます。

なお、損害賠償請求は善意であるのは当然ですが、無過失である必要もあります。ようするに、善意無過失が条件というわけです。

表見代理のポイント

表見代理とは、表向きには代理権があるように見える状態です。

表見代理と無権代理の違いがわからない方もいるようですが、別物というよりは無権代理の亜種が表見代理と考えるとわかりやすいと思います。つまり、表見代理も無権代理と同じく正式な代理権は与えられていないわけです。

さらに無権代理の仲間ですから、表見代理による契約の相手方には催告権、取消権、履行請求権、損害賠償請求権があります。当然、本人の追認も可能で、無権代理とほとんど同じです。

ただ、表見代理は何も代理権がないというよりも、正式な代理権の範囲で行動していないという言い方が正しいかもしれません。というのも、表見代理には3つの種類があるからです。


表見代理の種類

・代理権限以外の契約
「家を貸して賃料を稼ぐ」という代理権を与えたのに代理人が家を売っちゃった

・代理権消滅後の契約
代理権を与えたけど、後見開始の審判を受けて代理権がなくなった。それなのに家を売っちゃった

・まだ代理権を与えていない契約
代理権を与える予定で委任状だけ用意してた。でも勝手に委任状使って家を売っちゃった

いずれも表見代理にあたる行為なのですが、こうしたケースで契約がどうなるかは相手の落ち度によって変わります。

善意無過失の相手は何も悪くないわけで、契約が成立しないとかわいそうです。ですから、いずれの場合でも本人との間で契約が有効となります。表見代理行為は代理人の責任とも考えられますが、事情を知らない相手との契約前に手をうたなかった本人の責任となるわけです。

しかしながら、相手が表見代理を最初から知っていたか、途中で気づいたりした場合は相手にも問題がありますし、表見代理による契約が有効では本人も損します。

以上のような理屈から、相手が悪意か善意有過失だと表見代理による契約は無効となるわけです。