不法行為のポイント【使用者責任・工作物責任・共同不法行為】

不法行為で重要な使用者責任

不法行為とは、一言でいうと他人の利益や権利を侵害することです。違法に他人に損害を与えた場合は当然ながら、損害を賠償しないといけません。

賠償義務は相手方に損害が発生した瞬間に発生し、催告などなくても賠償しないと履行遅滞となります。

ここまでは簡単だと思います。

宅建でも不法行為の出題頻度は下がっているようですが、一番覚えておきたいのは使用者責任についてです。


使用者責任

プライベートで不法行為をした場合はともかく、従業員が業務上不法行為をした場合、不法行為をした本人が被害者に対して賠償責任を負うのは当然ですが、勤めている会社にも賠償責任が生じるケースがあります。

会社の監督が不十分だと認められた時に、不法行為者を使用している責任として賠償義務を負うわけです。これを使用者責任といいます。

会社が行き届いた監督をしている場合には使用者責任を免れるので、絶対という点ではない点に注意です。

使用者責任を負った会社が本人の代わりに損害を賠償した場合、不法行為者に対して求償することもできます。これは不法行為をした人によって会社も被害を受けたと考えられるからです。

当然ながら、不法行為者に責任がない状態では会社にも何の責任も被害もありませんので、使用者責任は成立しません。

また、不法行為によって損害を被った人は、不法行為をした本人と会社の両方に対して損害全額の賠償を請求できます。不法行為者と会社は被害者に対して連帯債務を負う形になりますが、これには負担部分がありません。つまり、どちらかに消滅時効が成立しても債務が半分になったりはせず、被害者は全額を請求できるんです。

不法行為というのは違法に人に損害を与える行為ですから、責任も重いというわけです。

その他の不法行為

出題頻度は高くないですが、念のためおさえておきたい点です。

・工作物責任
賃借人が住んでいるアパートの修繕を建設会社がしている時に、工事の過程で通行人にけがをさせた場合などの責任問題です。

ケガをした通行人に対して賠償責任を負うのは原則的には賃借人ですが、建設会社が注意喚起をしていた場合は賃貸人(建物の所有者)が賠償責任を負わないといけません。

実際に占有している賃借人は必要な注意をしていれば賠償責任を免れることができ、賃借人は無過失でも責任を負うわけです。

・共同不法行為
複数人が共同で不法行為を行い他人に損害を与えた場合は、不法行為者全員が被害者に対して賠償責任を負い、連帯債務をもつ形になります。

使用者責任の被害者と同じく、共同不法行為を受けた人は誰に対しても賠償請求可能です。そして、不法行為者の1人が全額弁済した場合、他の不法行為者に求償することもできます。