宅建業者の欠格事由<免許を受けれなくなる理由>

宅建業者の欠格事由とは

お客さんにとっては一生に一度の買い物かもしれない重要な取引を扱っているのが宅建業ですから、安心して契約するためにも業者そのものに一定以上の信用が求められます。

しかし、一般消費者が宅建業者の信頼度をはかることはできないので、宅建業法で業者として不適切な者を排除するように定められています。

ふさわしくない人には免許を与えないよう決めておけば、信用に足らない人物が宅建業を営むことができないため、お客さんは安心して取引を行うことが可能です。

このふさわしくないと言える原因のことを欠格事由といい、どのような人が該当するかが試験では頻出されます。

相続欠格(相続人としてふさわしくない)も民法の範囲で出題されますが、欠格事由は宅建全体でもかなり重要なポイントです。

宅建業法の範囲では難易度も高めですが、なんとしても理解できるようにしておきましょう。

以下で解説する宅建業者の欠格事由はいずれも覚えておくべき重要ポイントですが、ただ丸暗記をするのではなく、理解しながら覚えることを意識してみてください。理由はそのほうが暗記しやすいような内容だからです。

百聞は一見にしかずで早速見てみましょう。

こんな人は免許をもらえない

①成年被後見人、被保佐人、復権を得ていない破産者

制限行為能力者という括りで覚えてはいけません。未成年でも宅建業者にはなれます。(⑧で解説)

破産者に関しては、復権を得ればただちに免許を受けられます。復権5年後といったひっかけ問題が頻出しますが、ひっかかる理由はこれ以降でてきます。


②禁錮・懲役に処せられ、その刑の執行が終わって5年を経過しない者

③宅建業法違反で罰金に処せられ、その刑の執行が終わって5年を経過しない者

④暴力団員による不当な行為の防止に関する法律違反、暴行、脅迫、傷害、背任で罰金に処せられ、その刑の執行が終わって5年を経過しない者

②~④をまとめると「前科のある人は刑が終わってから5年は待たないと免許をもらえない」となります。

②は厳密には禁錮以上の刑で死刑も含まれますが、それよりも他の法律違反も含まれる点に注意です。たとえば、車の運転で重大な事故を起こした場合など、宅建業と直接関係がないことで禁錮以上の刑に処せられても、執行後5年間は免許をもらえません。

一方、③や④は禁錮より軽い罰金でも、執行後5年間は待つ必要があります。しかし、過料はちょっとしたミス程度なので、欠格事由とまではなりません。

また、執行猶予がついた場合でも免許は受けれません。ただし、執行猶予期間が満了したら5年待たなくてもただちに免許が受けられます。


⑤不正手段による免許の取得、業務停止処分違反、業務停止処分事由にあたる情状が特に重いために免許を取り消され、取り消し日から5年を経過しない者

免許を不正に取得したりして免許を取り消されたら、5年は待たないと免許を受けれないという意味です。

「情状が特に重い」というのは、簡単にいうと同情の余地なしといったイメージになります。業法違反と知りながら長々と業務をしていた時など、特に悪質と判断されたときの表現と覚えておけば大丈夫です。

なお、免許を取り消された理由が上記以外の場合は5年待つほど悪質ではないため、免許を受けれます。


⑥上記⑤に該当するとして、免許権者の聴聞の期日と場所の公示がなされ、公示日から処分決定までに解散または廃業の届出をし、その届出から5年を経過していない者

⑤に該当する悪質な人であっても免許を取り消す場合は、聴聞という手続きが行われます。聴聞のイメージは弁解する場を設けるといった感じですが、聴聞前には話を聞いてあげるからいついつにここに来なさいと伝えて(公示)もらえるわけです。

しかし、聴聞を受ける前に自ら廃業したりして処分を免れようとする業者もいますから、こうした時に届出をしたら5年は免許を受けれなくなります。誤解があるならば聴聞の場に出ればいいだけで、それをせずに廃業するのは悪質と判断されるわけです。


⑦上記⑤の者が法人の場合、聴聞の公示前60日以内にその法人の役員であった者で、取消しの日から5年を経過していない者

⑤が会社などの組織である場合、その役員も悪質な者と考えられます。会社は悪質だけど役員は健全なんてありえないので、役員だった個人が業者になろうとしたりしても5年間は免許を受けれません。

しかし、何年も前に役員だったけど今はその法人にも所属していないなんて場合は、さすがに無関係になります。なので、聴聞公示前60日以内に役員だった者と定められているのです。


⑧営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、法定代理人が上記①~⑦のいずれかにあたる者

「営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」とは、とどのつまり一般の未成年者(未婚)です。一般の未成年者の法定代理人が①~⑦に該当するということは、言い換えると一般の未成年者は免許をもらえるということです。

これはあくまで原則ですが、判断力が備わっている法定代理人がいるために免許を受けてもOKという理屈になっています。

しかし、肝心の保護者が前科のある人だったり極悪人だったら困りますから、法定代理人が①~⑦に該当する未成年者は免許が受けれないわけです。逆に「営業に関して成年者と同一の行為能力を有する未成年者」つまり、営業許可を得た未成年者であれば、法定代理人が①~⑦でも免許を受けれます。


⑨法人で、その役員または政令で定める使用人の中に、上記①~⑦のどれかに該当する者がいる場合

⑦もそうですが、会社と役員は同一と考えられるので、役員や使用人が悪質ならば会社もろくでもない会社とみなされます。ですから、法人に対しても「こういう人が役員をやっているなら免許をあげない」と定めているのです。

いずれもめちゃくちゃややこしいですが、学習は避けて通れない部分です。「なぜか?」と理屈を考えながらひとつひとつ覚えていきましょう。