業務上の制限・広告に関する規制・取引態様の明示義務

業務上の制限

宅建業者の業務には禁止事項や制限が多数設けられています。常識的に考えると当然と言えるものや理屈が理解できれば納得できるものばかりですから、順番に覚えていきましょう。


・宅建業者は重要な事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げてはならない。

要するに、大事なことを黙っていたり(黙秘)、嘘をついたりしてはいけないという意味です。こうしたことがあった場合、消費者は契約の取り消しができます。


・業者は契約の締結の誘引をするに際し、「断定的判断の提供」および「威迫行為」をしてはならない。

断定的判断というのは「この土地は必ず高くなるので、今買えば儲かります」といったように「必ず」「絶対」といった消費者が誤解をする表現を指します。

威迫行為はおどしのことで、断定的判断の提供と同じく禁止されています。

また「この家は引く手あまただから今日決めないと売れます」など、考える時間を与えず煽ったり、手付放棄に対応しないといった行為も禁止事項にあたります。


・宅建業者は宅地・建物の登記や引渡し、取引にかかる対価の支払いを不当に遅延する行為をしてはならない。

やるべきことを遅らしたりせずに、すみやかに履行しましょうということです。


守秘義務

守秘義務とは職務上知った秘密を守ることをいい、宅建業者に限らず広く使われる言葉です。不動産取引では相手に個人情報を伝えないといけない場面が多々ありますから、おしゃべりな業者を許すことはできません。

守秘義務として定義されている具体的な内容は「業者と従業者は、業務上知った秘密を現役中も引退後も正当理由なく他に漏らしてはいけない」です。正当な理由なくとなっているので、本人の承諾がある場合など、然るべき理由があるときは漏らすことはできます。

この守秘義務は業者だけでなく従業者にも課せられた義務で、違反した場合は罰金となります。

また、現役中や勤めている会社を退職した後でも、正当な理由なく漏らすことはできません。


手付貸与の禁止

取引相手が了承していても、手付金を貸し付けて契約の勧誘をすることは禁止されています。業者が手付金を貸し付けて契約すること自体に問題はないように感じますが、実際は大問題に発展する恐れがあります。

もし、手付貸与の禁止という規制がなく宅建業者が手付金を貸せてしまうと、消費者が契約の解除をする時には、借りてまで支払った手付の放棄をしないといけません。

表面上のお金の動きは業者が用意したお金を戻すだけに見えますが、この時の返済は手付の放棄によるものです。ですから、手付金を返した後も最初に借りた金銭債務が残るため、消費者は大損してしまいます。

こうした危険が潜んでいるので、業者が契約したいがために手付金を貸したりすることは禁止されているのです。

広告に関する規制

広告の表現がオーバーだったり煽るケースは多いですが、誇大広告は禁止されています。不動産の広告で正しく表記しないといけないものは以下の項目です。

①物件の所在地・規模・形質
場所はもちろん、土地や建物の面積も正確に表記しないといけません。形質というのは、土地の地目や建物の構造や築年数です。

②環境・交通その他の利便・利用の制限
物件の周囲の環境や最寄駅までの所要時間などの表記です。利用の制限というのは「地上権の対象になっていないか」などの表記を指します。

③代金の額や融資のあっせん
代金だけでなく支払方法も正確に表示する必要があります。

上記項目について、著しく事実と違う表示をしたり実際より著しく優良・有利と誤認されるような表示をすることを禁止しています。

いずれの項目も、実際の被害がなくても誇大広告になります。

また、環境に関する項目は今現在だけでなく、将来のことについての表示でも誇大広告にあたりますし、たとえ、予想といった注記があってもダメです。

誇大広告の禁止に違反した場合、業務停止処分となるので、これもあわせて覚えておきましょう。


未完成物件の広告・契約

建物なら建築確認、宅地なら開発許可等の後でないと広告・契約をしてはいけないことになっています。まだ建っていない建物を契約した後で「建築確認できなかったので建てれません」では困るからです。

取引態様が何であれ広告も契約も禁止されていますが、貸借契約の代理・媒介だけは例外的に認められています。

当然ながら建築確認や開発許可等を申請している場合でも、実際に確認や許可を得た後でないと広告も契約もできません。

「確認を得るまで契約できないので、ご了承ください」といった注意書きをしたりしても認められませんから、どんな形であれ無理と覚えておきましょう。

取引態様の明示義務

宅建業における取引には8種類ありますが、消費者は取引相手の業者がどの取引をするのかがわかりません。取引態様がわからないと業者の自社物件を買ったつもりが、実は他人物件だったなんてケースもあるわけです。

そこで、宅建業における取引のどれなのかをハッキリさせる決まりを業者につけています。

おさらいになりますが、宅建業における取引とは「自ら売買」「自ら交換」「売買の代理」「交換の代理」「貸借の代理」「売買の媒介」「交換の媒介」「貸借の媒介」の8つです。

宅建業者は、これらの取引態様を広告をする時に明示しないといけませんし、さらに注文を受けたら遅滞なく明示しないといけません。これが取引態様明示義務です。

広告の時に明示すればOKではなく、広告時および注文時なので注意しましょう。広告を見た人と注文した人が同じでも取引態様明示を省略はできませんし、注文した人から聞かれなくても自主的に遅滞なく明示しないといけません。

違反した場合は業務停止処分となることもあります。しかし、明示方法に関する制限はないため、口頭で告げることも認められています。

なお、取引相手が一般消費者ではなく同じ宅建業者であった場合でも、取引態様の明示は省略できません。