自ら売主制限(8種制限)の前提と具体的な内容

自ら売主制限とは?

宅建業者にとっては同じ物件の契約でも、媒介や代理による報酬より自らが売主となるほうが儲けは大きくなります。

「お金は人を変える」なんて言われるくらいですから、儲けが大きくなる場合こそ、より消費者保護が重要になるのです。

そこで「宅建業者が自ら売主となり、かつ、買主が一般消費者の場合」にのみ適用される制限が定められています。これを自ら売主制限、あるいは8種制限といいます。

8種制限という言葉通り、これらの決まりは全部で8つあります。どれも出題される内容ですから、しっかりと理解をしておきましょう。

8種制限の内容

クーリング・オフ

クーリング・オフとは、簡単にいうと解除のことです。ただし、民法で規定されている解除とは別物ですから、混合しないようにクーリング・オフとして覚えておきましょう。

言葉自体は日常で耳にすることもありますが、条件や方法に細かい決まりがあります。


自己所有に属さない物件売買の制限

民法の規定では、他人物売買は可能となっています。しかし、他人の物を売る契約は担保責任をはじめ、様々なトラブルがつきまとうものです。

そのため、宅建業者が自ら売主となり消費者と取引する場合には、他人物売買をしてはいけないことになっています。

契約に条件をつけることはもちろん、契約そのものや予約なども禁止されています。

しかし、目的物となる物件などが確実に取得できる場合に限り、例外的に売買が認められます。この確実に取得できる場合というのは「宅建業者が目的物を取得する契約を締結している場合」か「予約を締結している場合」です。

条件付契約は条件が成就されないケースがあるため、確実とはいえませんから締結していても売買できません。

また、未完成物件も同様に売ってはいけませんが、手付金等の保全措置を講じた場合は例外的に認められます。


手付金等の保全措置

上記で触れた手付金等の保全措置も8種制限の1つです。手付金を返してもらえない消費者を保護するのが目的の制度になります。

おそらく、8種制限の中では一番難しい内容かと思います。


手付の制限

手付には解約手付と証拠手付がありますが、8種制限の条件下で売主が買主から受け取った手付は常に解約手付とみなされます。さらに、買主に不利な特約は全て無効となります。

ちなみに、解約手付とは放棄もしくは倍返しで契約解除ができる手付で、証拠手付は契約成立の証となる手付です。

手付の金額が大きくなりすぎると買い手による手付放棄が難しくなりますから、宅建業者が受け取れる手付の額の上限は、目的物の代金の20%になっています。

なお、8種制限の条件下では「宅建業者の債務不履行による損害賠償責任を免除する特約」は無効です。


損害賠償予定額の制限

損害賠償額の予定や違約金の約定は、契約違反時に支払う金額を事前に決めるものです。業者自らが売主、買主が消費者の場合には、その額は代金の20%が限度になっています。

たとえ違反して多めに定めてもそれは無効となり、自動で20%が予定額となります。


瑕疵担保責任の特約の制限

民法で定められた瑕疵担保責任の規定より買い手に不利な特約は無効となります。ただし、買い手にとって有利な特約の場合は有効です。

なお、民法上は瑕疵担保責任の免除特約は有効ですが、8種制限の条件下ではそれも無効となります。


割賦販売契約の解除の制限

割賦販売とは、分割払いのことです。分割払いで買い手の支払いが多少遅れても、業者がいきなり解除することは認められません。

正確な表現になおすと「宅建業者は、30日以上の相当の期間を定めて、書面で催告をし、それでも支払いがない場合に限り、契約解除や一括返済請求が可能」です。


所有権留保の制限

所有権留保とは、物件の代金が支払われるまで売主が登記を買主に移転しないことです。売り手には、代金が支払われない場合に契約解除をして、他の人に売ることもできるので、メリットがあります。

しかし、8種制限は消費者保護が目的ですから「代金の30%の支払いを受けるまでは所有権留保は可能。それ以降は不可」となります。


繰り返しになりますが、8種制限はいずれも宅建業者が自ら売主で、買主が一般消費者の場合にだけ適用される制限です。宅建業者同士の取引や売り手が業者でない場合には適用されないので、前提を忘れないように注意しましょう。