意思表示(詐欺・強迫・錯誤・虚偽表示・心裡留保)の原則と例外

意思表示制度について

十分な判断能力が備わっている大人でも、勘違いから契約をしてしまうことはありえます。あるいは消費者に知識が足りないことをいいことに、悪徳業者がだまして契約させるなんてケースもあるかもしれません。

このようなケースではたとえ制限行為能力者ではなくても、契約をやめたりなかったことにしたいと思うものです。

ですから、民法ではこうした特殊なケースをいくつか分類して、契約の取り消し可能や無効についても定めています。これを意思表示制度といいます。

宅建では「詐欺」「強迫」「錯誤」「虚偽表示」「心裡留保」の5つの意思表示について出題されます。まずはそれぞれの原則を見てみましょう。

各意思表示の原則

詐欺

騙されて契約してしまった場合までお金を払うなんて馬鹿げていますから、当然契約の取り消しが可能なのが原則です。シンプルに考えれば簡単だと思いますが、契約が無効になるのではなく、取り消せる点に注意しましょう。


強迫

強迫というのは例えが悪いですけど、イメージとしてはカツアゲみたいなものです。「ぼこぼこにするぞ」とか「家燃やすぞ」なんて脅されて契約させられても強迫された本人は悪くないので、取り消し可能です。

なお、詐欺でも強迫でも契約から20年がたつと取消権は消滅します。これは制限行為能力者の場合と同じですから、全部まとめて覚えておくのがオススメです。


錯誤

錯誤というのは勘違い、思い違いといった意味です。本人としては勘違いして契約したので取り消したいと思うわけですが、一方的な勘違いだけで取り消せたら相手にも迷惑がかかります。そのため、原則として条件を満たした時に限り契約が無効となります。

その条件とは①契約に関する重要点の勘違い(要素の錯誤あり)②勘違いに不注意がなかった時(重過失なし)で、両方を満たせば無効を主張可能です。また、条件を満たしても錯誤による無効を主張できるのは本人だけで、相手や第三者は何も言えません。

まとめてわかりやすくいうと、自分の不注意で契約内容を勘違いしても無効とは言えず、たとえ錯誤の条件を満たしても周囲がシャシャリでるのは無理というわけです。

「あの人は勘違いしてたからあの契約は無効だよ」と第三者が言ってもそれが認められることはありませんが、要素の錯誤ありの証明になる可能性はあります。


虚偽表示

虚偽表示というのは相手方と一緒に架空の契約をすることです。イメージがつきにくいですが、本人はもちろん、相手も架空契約とわかった上で契約しているので、最初からなかったこと、つまり無効となります。


心裡留保

心裡留保とは一言でいうと冗談です。冗談だから最初から無効な気もしますが、相手が善意無過失で本気にすると有効になります。

なんでもかんでも「あれは冗談でした」で無効となっては契約相手が不憫なので、相手方に落ち度がない場合は冗談では済まないというわけです。

詐欺と強迫は取り消しできて、錯誤と虚偽表示は無効、そして心裡留保は場合によって有効と無効となるのが意思表示の基本となるので、これらをまとめて理解しておきましょう。

試験で問われる例外パターン

本試験では上記の原則だけではなかなか問題を解くことができませんから、頻出される例外パターンを土地の売買を例に解説します。


詐欺の取り消しは善意の第三者に対抗できない

騙されて契約した人が取り消しをする前に騙した側が土地を第三者に売ってしまった場合は、第三者が善意か悪意かで変わります。悪意、ようするに詐欺を知っていたケースでは騙された人が一番かわいそうですから、土地は元通り取り返せます。

しかし、第三者が何の事情も知らない善意だと取り消しは主張できません。事情を知らない人の保護も必要ですし、騙される方にも多少問題があったという理屈です。


強迫の取り消しは善意の第三者に対抗できる

詐欺と同じく、強迫で契約させられた人が取り消しをする前に土地を転売されたらどうなるのか?ですが、詐欺の場合とちがって善意の第三者にも取り消しを主張できます。事情を知らない人の保護は先ほどと同じく必要になりますが、詐欺と違って強迫はそれとわかっていても本人は何もできません。

つまり、強迫された方にも問題があるとはみなされないわけです。結果として、善意の第三者に過失がなくても取り消しを主張して、元の持ち主は土地を取り返せます。

ここが詐欺と強迫の大きなちがいで、重要ポイントですから特に気をつけましょう。


錯誤の無効は善意の第三者に対抗できる

錯誤は原則の時点で無効になる条件が2つあり、あまり主張する機会がありません。ですから、もしも条件がきちんと整っている場合には錯誤者本人をより保護すべきとして、善意の第三者にも対抗できるわけです。


虚偽表示の無効は善意の第三者に対抗できない

虚偽表示自体が周りを欺く行為ですから、何の事情も知らない人の保護が優先となります。よって善意であるならば、たとえ過失があっても、虚偽表示をした人は第三者には対抗できません。


心裡留保は相手が悪意なら無効になる

心裡留保は相手が冗談とわかっている場合(悪意)、無効になります。また、冗談とは思っていないけど、ついつい信じてしまった時(善意有過失)も無効です。

なお、心裡留保に第三者が関わった場合も、虚偽表示と同じく相手が善意なら対抗できません。ここは他よりも理屈が難しいので、そういうものと覚えておくのが吉です。

意思表示は例外パターンのほうが重要ですから、それぞれの違いをしっかり把握して問題にのぞみましょう。