宅建業法における事務所が備えておくべき5つのものと案内所

宅建業法で定められる事務所とは

事務所とは業務をおこなうための場所を指し、業務というのは当然のことながら宅建業になります。この事務所として認められるのは【本店(主たる事務所)】【支店(従たる事務所)】【継続的に業務を行うことができる施設を有し、宅建業についての契約締結権限を有する使用人が置かれている場所】の3つです。

本店というのは宅建業を営んでいるか、支店が宅建業を営んでいる場合の事務所を指し、支店とは実際に宅建業を営んでいる場合の事務所を指します。注意したいのは支店が宅建業を営んでいる場合、本店が建設業しかしてなくても(宅建業をしていない)、本店も事務所とみなされる点です。

最後のは要するに「電話番が1人でテントを構えてもダメ」といった意味で、移動が簡単な施設は事務所とはならないことになります。

条件を満たせばいずれも事務所として認められるものですが、大切なのは事務所が備えるべきものです。設置義務を怠ると罰金ですし、試験でも出題されるので確実におさえておきましょう。

事務所が備えておかないといけないもの

事務所が備えておくべきものは「標識」「従業者名簿」「帳簿」「報酬額の掲示」「取引主任者」の5つです。まず、標識は自分たちが業者であることを示すために掲示します。標識のことを正式には「宅地建物取引業者票」といいますが、正直覚える必要はありません。

それよりも大事なのは、標識には免許証にも記載しない内容を記載するということです。つまり、標識の代わりに免許証を掲げるのは認められず、標識の掲示は必須となります。記載内容を覚えるのが大事なのではなくて、免許証で代用するのが無理という点がポイントです。

ちなみに、免許証とは主任者証ではなく業者の免許証のことですが、いずれにしてもダメなものはダメです。

続いて従業者名簿ですが、これは事務所ごとの従業者の情報が記載された名簿を指します。ここで大切なのは、名簿の保存期間が最終記載から10年となる点です。

従業者名簿と同じく、事務所ごとに必要なものが帳簿になります。帳簿は取引内容を記載する台帳で、保存期間は5年ですから従業者名簿の保存期間と混合しないよう注意です。

事務所に備えるものでわかりにくいのが「報酬額の掲示」かと思います。これは、国土交通大臣が定める業者の報酬がいくらなのかを示すという意味です。

たとえ報酬をもらわない業者でも掲示をしないといけません。報酬をもらわないというのはボランティアではなくて、自分のところの物件を分譲しているだけの場合などがあります。

報酬については業法の別のところで詳しく解説しますが、代理や媒介で受け取るのが報酬です。ここではひとまず、事務所には報酬の掲示は絶対必要ということだけ覚えておきましょう。

最後は取引主任者ですが、これは重要ポイントが多いです。

取引主任者の注意点

宅建業者が事務所に取引主任者を置くときの決まりは「その事務所の従業者の5人に1人以上の割合」「成年である専任の取引主任者」の2つあります。

成年というのは言葉の意味通りですが、民法で学んだ「婚姻している20歳未満の者も含まれる」点に注意です。

ルールに従って置いていた取引主任者が万が一いなくなった場合は、2週間以内に新しい人を用意しないといけません。初めからいないならそもそも事務所を開設できませんし、欠員の補充を怠ると業務停止処分をうけることもあります。

それと、業者自身、あるいは業者が法人でその役員が取引主任者である場合は、その人が専任の取引主任者とみなされます。ですが、ここで言う役員には業務を監査する監査役は含まれないので、監査役が取引主任者だからOKとはならない点も注意ポイントです。

案内所でおさえておく点

事務所以外の場所は「案内所」として別の規制が設けられています。案内所という言葉ではイメージがわきにくいですが、モデルルームを想像するとわかりやすいのではないでしょうか。

住宅展示場など他にも案内所扱いになるものは細かくありますが、重要なのは案内所において一団の宅地建物をどうするかです。一団というのは、10区画以上の宅地あるいは10戸以上の建物を指します。

案内所で一団の宅地建物を分譲する場合は、標識の設置義務があります。また、この案内所で契約の締結までするなら、免許権者および現地の知事に業務開始の10日前までに届出をしないといけません。さらに、成年である専任の取引主任者を1人以上置く必要があります。

事務所と違って主任者は5人に1人ではない点に注意です。

そして、この案内所が土地に定着している場合は、上記のルール+クーリング・オフができないという規制がでてきます。

同じ案内所でもルールが変わるので、順番に規制を覚えておくようにしましょう。

なお、事務所では設置義務がある「従業者名簿」「帳簿」「報酬額の掲示」は、案内所になくても問題ありません。