危険負担の原則と買主が負担を免れる条件付の売買契約

納得できない?危険負担の原則

家や土地などの不動産は決して安い買い物ではありませんから、契約の意思表示をしたら滞りなく手にしたいものです。

しかし、自然災害の影響などによって購入したばかりの家が全壊したりすることもあります。特にローンを組んで購入したら、家はなくなり借金だけが残ってしまうので購入者は辛いです。

こうした時に残ったローン、つまり債務を支払わないといけないのか?というのが危険負担です。「危険=災害など(不可抗力)による損害を誰が負担するのか」といったイメージで考えるとわかりやすいと思います。

実際に家を購入したと想像してみてください。

5000万円の家をあなたは買いましたが、家に住み始める前(引き渡しを受ける前)に大災害で家が潰れてなくなってしまいました。災害による家の損失は不可抗力、つまり誰の責任でもないものですが、まだ5000万円は払っていません。

果たしてなくなった家の代金を払う必要があるのでしょうか。

答えは「全額支払う必要がある」です。非常に理不尽な話と感じるかもしれませんが、意思表示と契約成立の条件を思いだしてみてください。

売買契約は意思表示のみ(契約書や登記などはいらない)で成立し、そのタイミングで所有権も移転します。つまり、家を買う意思表示をして不動産屋が契約の承諾の意思表示をした時点で、家はあなたの物になるのです。

そうすると、災害によって全壊した家は、たとえ住んでいなくてもお金を払っていなくてもあなたの家がなくなっただけと考えられます。ようするに、原因が何であれ自分の物がなくなったことがお金を支払わない理由にはならないというわけです。

また、これは全壊に限った話ではありません。危険負担においては半焼や半壊など、一部が焼けたり壊れたりした場合でも代金の全額を支払う必要があります。

試験では「契約者は解除可能」や「契約は無効」といった選択肢がでてきたりします。これらは間違いで、契約の解除もできませんし無効ともなりません。気持ち的には何とかしたいと思うものですから、ひっかけ問題に注意して危険負担の原則をおさえておきましょう。

条件付きの契約なら負担を回避できる

ただし、買主が負担を免れるケースも存在します。それは契約に条件がつけられていた場合です。

たとえば「就職が決まったら家を買います」と、条件つきで契約した場合が条件付きの売買契約にあたります。このパターンだと、就職活動している間(条件が満たされるかわからない間)は所有権は移転していません。自分の家になっていないので、不可抗力による家の損害すべてを負担させるのはいくらなんでもあんまりです。

なので、就職が決まる前に家が滅失(全焼など)した場合に限り、1円も払わなくて済みます。後で就職が決まる、つまり、契約の条件が満たされても一切支払う必要はないです。

しかし、もしも滅失ではなく損傷(半焼など)だった場合は、危険負担の原則にもとづき支払う必要がでてきます。たとえ就職が決まる前でも、損傷の場合は就職が決まった後に代金の全額を払わないといけないのです。

まとめると、滅失の危険負担は売主、損傷の危険負担は買主となります。

全体を通して買主が損をしそうなケースが多いですが、物権変動の原則があるため仕方ありません。感情的に考えて、ひっかけ問題につかまらないように注意しておきましょう。