虚偽表示における当事者と善意の第三者のちがい

虚偽表示の原則と例外

虚偽表示とは簡単にいうと架空契約のことで、相手とグルになって周りを欺く契約です。土地をあげるつもりはないのに、あげたことにしたりすると虚偽表示になります。

契約相手も虚偽表示であることをわかって話を合わせているので、錯誤(勘違い)や心裡留保(冗談)とはなりません。ちなみにお互いに口裏を合わせることを通謀といいます。

この虚偽表示ですが、基本的にはその契約はなかったこと(無効)になります。たとえ、土地をもらう側が登記を済ませていても無効扱いで、所有権は元の持ち主のものになるわけです。

しかし、契約が無効とはならない例外パターンもあります。それは、土地をもらった側が勝手に何も知らない人(善意の第三者)に売ったりした場合です。このケースでは、元の持ち主と売り手の架空契約について事情を理解してあげる必要はありませんから、土地の所有権は元の持ち主ではなく、最後に買った人に移ります。

また、言葉からイメージできるように虚偽表示は保護に値しない行為です。そのため、何も事情を知らない第三者は、過失があっても所有権の移転登記をしていなくても、元々の所有権者に対抗できます。

当事者と善意の第三者のちがい

虚偽表示の原則と例外は上記のとおりですが、注意したいのは「善意の第三者」が全ての人ではなく、「虚偽表示の後に新しく利害関係をもった人」に限定される点です。

つまり、虚偽表示の前から利害関係があった人は第三者とはみなされず、保護もされなくなります。そして、利害関係を事前にもっていた第三者は当事者と同じとみなされます。

当事者と第三者という言葉ではまるで別人のように感じますが、利害関係がいつできたかで扱いが変わるというわけです。「虚偽表示より前か?後か?」で、当事者と第三者を区別しておくのがいいでしょう。

ちなみに詐欺の場合も、元から利害関係があった場合は当事者とみなされるので一緒に覚えておくといいと思います。

抵当権がからむ当事者

原則と例外、さらに「利害関係が生まれたタイミングで当事者か第三者かが変わる」と把握しておけばほとんど問題ないのですが、ややこしいのは抵当権が絡んだ場合です。

たとえば、とある土地に2人が抵当権をもっていたとします。一番抵当権者をAさん、二番抵当権者をBさんとして話をすすめます。

Aさんが抵当権を放棄したら二番抵当権が繰り上がるのが原則で、Bさんが一番抵当権者になるのが普通です。(これは虚偽表示ではなく抵当権の順位の原則)

この時、Aさんが土地の持ち主に対して虚偽表示による放棄をした場合、どうなるのか?ここがやっかいで、難しいポイントです。

Bさんは二番抵当権者としてAさんが虚偽表示をおこなう前から利害関係を持っているため、当事者扱いになります。ですからBさんは第三者として保護もされなければ、抵当権が繰り上がることもなく二番抵当権者のままというわけです。

また、このケースではたとえBさんが何も事情を知らなくても当事者とみなされます。ここが2つ目の注意ポイントです。ここでいうBさんが、善意の第三者なのに当事者とみなされた人になります。

虚偽表示に抵当権までからむ問題はそこまで頻繁にはでないですから、こういうパターンは余裕があればチャレンジするくらいでいいと思います。

ただ、虚偽表示と詐欺の時の第三者と当事者の区別はひっかけ問題もあるので、頭に入れておくのが吉です。