消滅時効が始まるタイミングと時効の中断の成立条件

消滅時効の成立要件

時効の中でも消滅時効のほうが日常的に耳にする機会が多いと思います。借金をした時に「あれはもう時効だよ」なんてよくある話なわけですが、時効成立にも色々なルールがあります。

基本的に債権は、債権者がいつまでも「払え」と言わないと10年で消滅時効が成立します。債権の種類によっては10年ではなく1年のものなどもありますが、宅建試験では関係ないので、とりあえず「債権は10年で消滅」と覚えるだけで大丈夫です。

重要なのは「この10年がいつからか?」という部分です。

答えは「権利を行使できる状態から」となるわけですが、この状態は債権につけられた条件や期限などによって4つのパターンが存在します。


確定期限付きの債権(来るときが決まっている)

確定期限付きの債権というのは、たとえば1月1日が期限なら「その日に払う」と決まっているものです。この場合は期限が到来してから10年のカウントダウンが始まります。ようするに、1月1日に払わないと10年後に消滅時効が成立するわけです。


不確定期限付きの債権(いつかはわからないけど、必ずくる)

これは「いつかはわからないけど、いずれ来たら払う債権」というイメージです。たとえば、祖母が亡くなったら払うとか、いつ来るかは不確定な期限が設けられています。不確定期限付きの債権は、当然ながら期限が来たら消滅時効のカウントダウンが始まります。


条件付きの債権(来るかどうかもはっきりわからない)

条件というのはたとえば「就職が決まったら」とかです。この場合も条件が満たされたときに時効がスタートします。


期限の定めがない債権(いつとか決めていない)

期限が定まっていない、ようするにいつかは決まっていない債権は直ちに時効の進行が始まります。契約の成立=消滅時効の進行のスタートと考えればいいわけです。

上記4つは消滅時効で最初に覚えておきたいですが、他にも出題されやすいポイントがあります。

消滅時効の重要ポイント

債権の期限が訪れたり条件が満たされたときに消滅時効の進行が始まるのですが、これは当事者が知らなくてもスタートします。

たとえば「祖母が亡くなったら払います」と約束していて、亡くなった事実を債権者(払ってもらう側)が知らなくても、亡くなった時から10年で時効が成立するのです。仮に途中で知ったとしても、期限の到来から10年となる点がポイントになります。

続いて大切なのが、債権者が請求できないケースです。

重大な病気になり長期入院したりすると、債権者は「金返せ」と請求できない状態になります。しかし、それでも消滅時効は進行し続けるのです。つまり、個人的な都合は時効の進行とは無関係となります。

最後の重要ポイントは、時効の放棄は不可能という点です。

たとえば、あらかじめ「時効を理由にバックれません」と約束していても、10年後には消滅時効が成立して払わなくてもよくなります。債権者の立場で考えると理不尽な気もしますが、時効は各々の意思とは関係ないものなんです。事前に時効の放棄はできないと覚えておきましょう。

時効の中断

消滅時効だけを見ると「お金借りて10年無視すればOK」のように見えますが、貸した側からするとそんなことは絶対許せれません。

そこで、時効を成立させないために時効の中断というものが存在します。

中断という言葉のイメージだと一時的に止まる感じですが、現実には時効成立までの期間がリセットされます。時効のスタートから5年後に時効の中断があると、中断からさらに10年たたないと時効成立しないわけです。

大切なのは時効の中断が成り立つ条件で、これには請求と承認の2つがあります。

請求というのは文字通り「払え」と伝えることです。単に口で言えば済みそうですが、成立条件は意外とややこしくなっています。

まず、口頭で伝えることを催告といいますが、催告だけでは時効の中断とはならず、その後6ヶ月以内に裁判所で訴えを起こす必要があります。訴えるだけでは足りず、勝訴してはじめて中断が成立します。

つまり「口で言うだけ(催告のみ)」「訴えただけ(取り下げや敗訴)」では時効の中断とはならないのです。

なお、無事に勝訴して中断が成立したら、催告した時点から中断が成立します。

ちょっとややこしいですが、判決時に中断したことになるのではなく、催告から判決までは中断の効力が及んでいるとなります。そのため、中断の成立は催告時でも、判決確定後に最初から時効の進行が始まるのです。

中断時効成立のもう一つの条件が承認ですが、これは借りている側が認めるだけで成立します。裁判所への手続きも不要で、口頭での承認だけで時効が中断する点が請求との大きな違いです。

ただし、未成年者や成年被後見人が承認後に取消権を利用すると、時効中断はなかったことになります。同じ制限行為能力者でも被保佐人だと承認の取り消しはできなくなっているため、中断時効は成立します。

承認は難しくないですが、この点だけややこしいので注意が必要です。