宅建業を営む場所で変わる免許権者と免許の有効期間や免許換え・各種届出

業務をする場所で免許権者は変わる

免許とは業者が宅建業を営むために必要となるものです。業者といっても法人だけに限った話ではなく、個人でも免許を受ければ宅建業を始めることができます。

では、いったい誰が免許をくれるのか?という点は、覚えておきたい重要ポイントです。


知事免許と大臣免許

宅建業者は自分で「免許をください」と申請する必要がありますが、お願いするのは都道府県知事か国土交通大臣です。申請を受けて免許をくれる知事や大臣のことを免許権者といいます。

業者はどちらか一方に申請すればいいのではなく、事務所の場所によって申請する免許権者を変えないといけません。

全ての事務所を1つの都道府県内だけに置く場合、その都道府県の知事から免許を受けます。2つ以上の都道府県内に事務所を置く場合は、国土交通大臣から免許を受ける必要があります。

事務所が置かれている場所で免許権者が変わる点がポイントで、事務所の数は関係ありません。

たとえば、東京都内に事務所を何百カ所設置したとしても東京都知事の免許を受ければいいですが、東京に1カ所、千葉に1カ所といった具合に都道府県が2つ以上になる場合は、各都道府県の知事ではなく国土交通大臣の免許を受ける必要があります。

この免許の申請ですが、最初にお伝えしたとおり宅建業を営むなら個人・法人問わず申請が必要です。ただし、個人と法人は別物として扱われます。

ですから、免許をすでにもっている個人が法人化したとしても新しい免許を受ける必要があり、その場合も事務所の場所で免許権者は変わります。

免許の有効期間

宅建業の免許の有効期間は5年です。

有効期間が切れたら無免許状態になってしまいますから、期間満了前に免許の更新を行う必要があります。

更新の申請は免許有効期間満了日の90日前から30日前までの間にやらないといけません。この数字は暗記必須で、満了前30日以内や満了後30日といった間違った選択肢が混ざってくることもあるので、意味を再確認しておくのも大切です。

なお、認められている期間内に更新申請を終えておけば、仮に免許権者からの交付が遅れて免許の有効期限が過ぎても更新の決定が行われるまでは免許の効力は持続します。更新手続きを終えれば、新しい免許が来るまでは古い免許でOKというわけです。

ただし、新しい免許証が交付された後の有効期間5年は、交付日ではなく古い免許の元々の有効期間満了日から数えられる点に注意です。

免許換えについて

免許は日本全国どこでも有効です。東京都知事から受けた免許だから東京でしか使えないなんてことはなく、他の都道府県でも営業活動ができます。

しかし、事務所を別の都道府県にも設置する場合、2つ以上の都道府県となりますから国土交通大臣の免許が必要になります。

すでに免許をもっているのに新しい免許を受け直さないといけない状態なわけですが、これを「免許換え」といい、新しい免許を受けると古い免許は失効します。

免許換えは事務所の新設に限らず、廃止や移転などを理由に現在の免許ではダメなときに行うもので、以下の3パターンあります。

①知事免許を国土交通大臣免許に免許換え
例)事務所を東京に設置し知事免許を受けていたけど千葉にも事務所を新設した場合、東京都知事経由で免許換えをしないといけません。経由というのは直接国土交通大臣に申請するのではなく、知事に免許換えの申請をしてもらうことです。

②国土交通大臣免許を知事免許に免許換え
例)東京と千葉に事務所を設置して大臣免許を受けていたけど千葉の事務所を廃止した場合、東京都知事免許に免許換えが必要です。これは大臣を経由する必要はありません。

③知事免許を知事免許に免許換え
例)東京に事務所を設置して知事免許を受けていたけど千葉に事務所を移転した場合、千葉県知事免許に免許換えが必要です。これも東京都知事を経由する必要はありません。

免許換えによる新しい免許の有効期間は、免許換えの時から5年になります。また、免許換えが必要な状態にもかかわらず怠った場合は、現在の免許が取り消されます。

届出のルール

免許権が各業者の現状把握のために義務付けしているのが、免許権者への届出です。届出が必要なのは「一定事項に変更があった場合」「宅建業者ではなくなった場合」の2つです。

変更があれば届出が必要な事項
・名称、商号・事務所所在地
・役員と政令で定める使用人
・専任の取引主任者の指名

政令で定める使用人とは、各事務所の代表となる人を指します。

上記の事項に変更がある場合、30日以内に免許権者に届け出をしないといけません。項目と合わせてこの数字も要暗記です。

宅建業者ではなくなった場合
宅建業者でなくなるというのは廃業がもっともイメージしやすいですが、他にも定義されています。また、状況によって届出をする人が変わりますから「こういう時はこの人が届ける」というのをまとめて覚えておきましょう。

死亡 → 相続人
合併消滅 → 消滅した会社の代表役員だった人
業者の破産 → 破産管財人
取引主任者の破産 → 本人
解散 → 精算人
廃業 → 廃業した本人または法人の代表役員

いずれの場合も宅建業者ではなくなりますから、届出義務者が30日以内に免許権者に届出をしないといけません。なお、届出義務者が相続人の場合に限り、死亡を相続人が知ってから30日以内になります。

最後の重要点は「届出してからいつ免許の効力がなくなるのか?」という点で、これは業者でなくなった理由により変わります。死亡や合併消滅の場合はその時に免許は失効し、破産・解散・廃業は届出の時に失効します。

各種手続きの時に免許が効力を失うわけではないので、注意しておきましょう。