債務不履行の成立要件と履行遅滞の進行が始まるタイミング(時効との違いに注意)

債務不履行が成立するには?

債務不履行とは簡単に言うと約束を破ったという意味です。この表現だとなんだか軽い感じに聞こえますが、売買契約などにおいて約束を破るということは契約違反にあたります。

この債務不履行ですが、大きく2つの種類にわけられます。

1つは約束の日になってもお金を払わない、物を引き渡さないといった履行遅滞です。これは履行(約束通りにすること)が遅れているという意味になります。

履行そのものができなくなってしまった場合は履行不能となり、これが2つめの債務不履行です。履行不能は引き渡す物がなくなった状態で起こりえるのですが、家が燃えたときなどがこの状態にあたります。

ただし、家が燃えた状態といっても山火事などの不可抗力が原因の場合は、履行不能ではなく危険負担になります。ようするに、持ち主の不注意で引き渡し不可能な状態になったら、履行不能になるというわけです。

債務不履行は履行遅滞にしろ履行不能にしろ契約違反行為ですから責任追及されるべきですが、相手方のミスがないと追及できません。このミスのことを「債務者の責めに帰すべき事由」といいます。つまり、相手を責めるだけの理由があるのか?といった意味です。

相手のミスといっても故意と過失がありますが、どちらの場合でも事由があれば債務不履行が成立します。

履行遅滞が始まるタイミング

宅建試験で出題されやすい学習ポイントは、「履行遅滞がいつから始まるのか?」という点です。もちろん約束を破ったときがスタートとなるわけですが、この約束に期限や条件がついている時には履行遅滞の始まるタイミングが変わります。


確定期限付きの債務(いつ渡すか決まっている)

期限がきまっている債務は、期限の到来と同時に履行遅滞となります。「1月1日に渡す」となっていたら「1月1日」から履行遅滞です。


不確定期限付きの債務(いつくるかわからないが、必ずくる)

「祖母が亡くなったら払う」など、期限が不確定な場合は、期限の到来を相手方が知った時から履行遅滞がスタートします。


条件付きの債務(条件が満たされるかは不明)

「就職が決まったら払う」など、いつくるかはもちろん、くるかどうかもわからない条件がついている債務は、条件が満たされた事実を相手方が知ったときから履行遅滞になります。


期限の定めがない債務(いつとか決めていない)

期限や条件を特に決めていない場合は、相手方が履行の請求をした時点から履行遅滞になります。

条件や期限がつけられた債務の種類は消滅時効のスタートと同じものですが、始まるタイミングの違いに注意です。

問題を解いている時に履行遅滞のスタートタイミングで混乱したら、相手方の立場で考えるとわかりやすくなります。

条件の成立や期限の到来を知った、あるいは請求したのに履行されない場合は「約束を守ってくれない」と言えるから履行遅滞が始まっているわけです。逆にこちらが期限が来たことや条件が成就した事実を知らない場合、相手が約束を破っているとまでは言い切れないので、履行遅滞はスタートしません。

勝手に始まる時効との違いに注意しておきましょう。