連帯債務の負担割合の原則と他の債務者に効力が及ぶもの・及ばないもの

連帯債務の原則

連帯債務というと難しく聞こえますが、わかりやすい表現になおすと「割り勘」という意味です。仲の良い友人2人を誘って3人でご飯を食べに行き、食事代が3000円だったとしたら、この代金が3人の連帯債務となります。

「女子は払わない」「割り勘させる男は器が小さい」といった話はともかく、この例では3000円の食事代を1人1000円ずつ負担するわけです。

1人あたりが払う代金のことを負担部分といい、これは特に決めていない場合は平等になります。なので「女子は払わない」とみんなで決めたなら、負担部分を変えることも可能です。

では、この例を使ってそのまま連帯債務の原則について解説していきます。

食事代をもらう立場にあるお店は、3人の誰に対しても代金3000円を請求可能です。レジの前で「いや、わたし1000円払ったし」なんて言っても通用せず、お店にお金を払わないといけません。

とりあえず誰かが代表になって3000円まとめて払うとお会計は済みます。弁済によって連帯債務から免れたわけです。まとめて支払いをした人は残りの2人に「ご飯代1000円払ってよ」と請求することができ、これを求償といいます。

ここまでは簡単だと思います。

他の連帯債務者に効力を及ぼす

連帯債務では誰か1人が債務を弁済すれば他の人の債務も消えるわけですが、これは要するに、1人に起こったことが残りの人にも影響を与えているわけです。

弁済以外にも他の連帯債務者に効力を及ぼすことが複数あり、これが宅建でも出題されます。中でも特に重要となるのは「相続」「請求」「時効」の3つです。


相続

債権者が連帯債務者の1人を相続した場合、債権者自身が連帯債務を負担することになります。お金を払ってもらう人が払う人の立場を相続したために「自分に対して借金がある状態」になってしまうのです。

こうした特殊な連帯債務は消滅することになっていて、その効力は他の連帯債務者にも及びます。

ようするに、亡くなった人がまとめて支払ったことになり(現実には違う)亡くなった人は残りの人に求償可能です。亡くなった人を相続したのは債権者ですから、債権者がそれぞれの連帯債務者に求償でき、その額は全部ではなく負担部分ということになります。


請求

最初のご飯の例で、お店が誰か1人に食事代の請求をしたとします。1人に対する弁済の請求となるのですが、これも他の連帯債務者に効力が及びます。つまり、お店から「代金いくらです」と言われたのが1人でも、後の2人も言われたことになるのです。

そして、この請求の効果は「時効の中断」「履行遅滞」も同様に起こします。

時効の中断はともかく、履行遅滞は口頭による催告でも成立しますから、誰かが請求されたらたとえ直接何も言われてなくても、全員お金を払うのが遅れていることになります。


時効

食い逃げをして消滅時効が成立した場合、1人の債務がなくなります。お店にお金を払わなくて済むわけですが、この時残りの2人には負担部分だけ債務が消滅します。3000円の食事代だったら、1人分を引いた2000円の連帯債務を負うようになるわけです。

他の連帯債務者に効力が及ぶのは共通ですが、負担部分だけという点に特に注意しましょう。


他の連帯債務者に効力が及ぶものは上記3つ以外にも「履行」「履行の請求」「更改」「相殺」「混同」「免除」がありますが、それほど重要ではないのでサラっと確認するだけでも大丈夫だと思います。

逆に1人に何かあっても他の人には関係ない、つまり効力が及ばないこともあり、こちらのほうが重要です。

効力が及ばないもの

①承認
承認は時効の中断要件ですが、1人が承認しても他の人には効力が及びません。つまり「食事代として払わないといけない借金がある」と1人が認めても、他の人の時効は中断しないのです。

②無効・取り消し
誰か1人に無効や取り消しの原因があっても他の人には関係ありません。ある1人が契約を取り消したり、無効になっても残りの人には連帯債務は残り続けます。

③期限の猶予
債権者が1人に対して「支払い期限を1週間延ばしてあげる」と言っても、他の2人は期日までに弁済しないといけません。

最後になりましたが、問題文で「無影響」という表現がでてくることがあります。これは言葉通りの意味で、1人の債務が消えても残りの人の債務には影響がないという意味です。

ですから、取り消しなどで1人関係なくなっても負担部分が引かれたりはせず、全体の債務を抱え続けることになります。

例)3000円の連帯債務を3人がもっていて1人が取り消した場合、残りの2人の連帯債務は2000円ではなく3000円のまま