制限行為能力者とは?
何かの契約をする時「自分にとって損はないか」「騙されたりしてないか」と慎重に検討した上でハンコを押したりサインをしたりするわけですが「物事を正しく判断できない」「契約内容の意味がわからない」こういった理由で、自分だけでは契約できない人がいます。
判断能力が十分に備わっていない人たちが家や土地などを買う際、相場より高い値段をふっかけられて契約してしまってもぼったくられたことにも気づけないので、売る側のカモにされどんどん損をしてしまうかもしれません。
そうした判断能力が不十分な人を保護するための制度として、制限行為能力者制度が存在します。
判断能力が不十分というのは知識が足りない人を指すのではなく、たとえば子供であったり精神病を患っている方のような場合です。
「子供が家や土地の契約なんてしないでしょ」と思われるかもしれませんが、法律的には名前を書いてハンコを用意するいわゆる契約だけでなく、買い物なども契約と考えます。
そして契約のことを行為といい、行為能力が備わっていない人が制限行為能力者なのです。
制限行為能力者の種類
宅建で主に学ぶ制限行為能力者は「未成年者」「成年被後見人」「被保佐人」の3種類です。あと「被補助人」もありますが、これは名前を聞いて制限行為能力者のことと理解できれば問題ありません。
未成年者というのは説明するまでもなく20歳未満の人です。ただし、結婚をすると年齢が20歳未満でも成年者とみなされます。
成年被後見人とは重大な精神疾患などが原因で判断力がないために、裁判所から審判をされた人です。 裁判所の審判というのは「あなたを成年被後見人にします」と認めることで、これを後見開始の審判といいます。
被保佐人というのは、成年後見人よりも軽度とはいえ一人では生活もままならないために審判を受けた人です。この場合の審判は補佐開始の審判といいます。
なお、判断力のことを事理を弁識する能力といい、試験でもこの表現で問われるので覚えておきましょう。
どのような保護がされる?
制限行為能力者制度で保護されるといっても具体的内容を知っておく必要があります。
まず理屈として覚えておきたいのは、制限行為能力者は判断能力が備わっていないのですから、一人でした契約は内容に関係なく取り消せる点です。
取り消せるというのは、取り消すまでは有効で取り消したら最初からなかったことになり、無効とは微妙に違います。
たとえばですが、高校卒業直後の未成年の子供が一人でスーツを買いにいって10万円のスーツを100万円で売り付けられたら、その契約は取り消せるわけです。実際にそんなことがあるかはひとまず置いておいて、法律上はそうなっていると考えてください。
話を戻して、制限行為能力者は保護対象なわけですが、裁判所が四六時中面倒を見るわけにもいきません。ですから、十分な判断力が備わっている保護者をそれぞれにつける必要があります。
未成年の場合は当然親が保護者になりますが、中には親がいない子もいるわけです。そのような時は未成年後見人という保護者をつけることになっています。
ちなみに親のことを民法上は親権者とよびます。
未成年者と同じように、成年被後見人には成年後見人、被保佐人には保佐人と呼ばれる保護者がそれぞれ付けられます。
親権者や未成年後見人、成年後見人のことを法定代理人と呼びますが、保佐人は法定代理人ではない点に注意です。
問題文で法定代理人と出題されたら、意味が理解できるようにしておきましょう。