宅建試験対策に重点的に覚えておきたい相殺のポイント

相殺とは?

相殺とは、債権者と債務者がお互いに債権と債務を持っている時に対等額をチャラにすることです。読み方は「そうさい」で「そうさつ」と読むと違う意味になります。

たとえば、ある人が100万円の債権をもっていて、その債務者も債権者に対して100万円の債権をもっている場合、相殺によって互いの債権を消滅させます。こうすればわざわざ100万円の借金を返して、同じ人から貸した100万円を返してもらったりする必要はないわけです。

今の例だと互いの債権が同額ですが、仮に一方が100万円でもう一方が80万円だった場合は、同額だけが相殺でき差し引かれた債務が残ります。つまり、80万円の借金はなくなり100万円を借りている人は20万円だけ支払えばいいのです。

相殺は互いが住んでいる場所などは関係なく、意思表示で成立します。弁済は本来、債権者の現住所で行うものですが、相殺の場合はわざわざどちらかが出向いたりする必要はないのです。

ここまでは簡単ですが、重要なのは弁済の時期に関する問題です。

弁済時期がずれている場合と効力の発生

互いの債務は対等額において相殺可能ですが、それぞれの債務の弁済期がずれていることも多々あります。たとえば、片方の債務(相手の債権)の弁済期が6月で、もう一方の債務(自分の債権)の弁済期が8月だった時などです。

この時、すでに弁済期が到来している債権者は相殺をすることができますが、弁済期が到来していない債権者は相殺を援用することはできません。

相殺は単純にチャラにするようにも見えますが、自分が借金を返したうえで相手にも借金を返してもらうものです。そのため、弁済期が到来しているほうが「まだ期限がきていないけど、借金を自分も払うから相殺しよう」と言えます。

逆に弁済期が到来していないほうが「期限のすぎた借金払うから」と言っても、それは当然の話であって、借金を払う代わりに相殺するという主張は筋違いなわけです。

ただし、債権に期限の定めがない場合はいつでも履行請求できるので、弁済期が来ているものとみなします。

また、当事者両方の債権の弁済期が到来して、どちらからでも相殺可能になった状態を相殺適状といいます。相殺の効力は相殺をする時期が弁済期を大幅に過ぎていたとしても相殺適状から生じることになるので、相殺に条件や期限をつけることはできません。

条件や期限をつけても、どのみち効力が発生するのは相殺適状の時になるからです。

その他のポイント

相殺に関してあと2点おさえておきたいポイントがあります。1つは消滅時効との関係で、片方の債権だけが時効によって消滅した時の話です。

債権が消滅したほうは債務だけが残る状態になってしまいますが、それでも消滅した債権と残った債務を相殺できます。時効で債権が消滅したとしても、それ以前に相殺適状であればいつでもチャラにできたので、時効の成立でも相殺可能なのです。

覚えておきたいもう1つのポイントは損害賠償と債権の相殺です。例えば、債権者が債務者に不法行為を行い、債務者が損害賠償請求をしたケースなどがあります。

こうした場合は、債権者が請求された賠償を債権で相殺することはできません。不法行為をした者が、その賠償を相殺で済ませるのは認められないのです。

ただし、被害者であり債務者でもある人が「損害賠償の代わりに借金チャラにして」と相殺をすることはできます。ようするに「加害者からは不可」「被害者からは可」となるわけです。