相続の基本(相続人の優先順位・代襲相続・承認と放棄・遺産分割)

相続人の優先順位

相続という言葉は日常的に使われることが多いです。人が亡くなり残されたお金や家(遺産)を相続するという話がよくありますよね。亡くなった人のことを被相続人といい、相続する人のことを相続人というわけですが、学ぶべきなのは誰がいくら相続するのか?という点です。

相続の優先順位と取り分の話になるのですが、まずは言葉の意味を理解しておく必要があります。相続の基本を学ぶにあたって知っておきたいのは以下の2つの言葉です。

・直系卑属・・・直系の関係にある、自分よりあとの世代。子供や孫

・直系尊属・・・直系の関係にある、自分より上の世代。父や母、祖父母

これらの意味を理解した上で、相続の優先順位を見ていきましょう。


一番優先される

まず、一番優先されるのは直系卑属と配偶者で、それぞれが遺産の2分の1を相続します。たとえば、結婚して配偶者と子供が2人いる被相続人の遺産3000万円を相続すると、配偶者が1500万円、残りの子供が750万円ずつ相続するわけです。

仮に父や母、兄弟、姉妹、あるいは2人の子供のどちらかが結婚していて、配偶者や孫がいても相続はできません。両親や兄弟、子供の配偶者は直系卑属ではないですし、孫は直系卑属でも子供が優先されるからです。

しかし、もし被相続人に婚姻していない愛人などとの間に子供がいた場合は、その子も相続人になれます。結婚していない人との子供とはいえ、直系卑属にあたるからです。

ここで注意したいのは、婚姻関係のある配偶者との子供と婚姻関係のない人との子供では、同じ直系卑属でも相続分が変わる点です。

結婚関係にある夫婦の子を嫡出子(ちゃくしゅつし)、婚姻関係のない人との子供を非嫡出子(ひちゃくしゅつし)といいますが、非嫡出子の取り分は嫡出子の2分の1となります。

先の例でいうと、3000万円の遺産は配偶者が1500万円、二人の嫡出子が600万円ずつ、そして非嫡出子は300万円となるわけです。


二番目の優先順位

被相続人に直系卑属がいない場合は直系尊属と配偶者が相続人となります。「子供や孫がいないなら両親が相続して」となったわけですが、注意したいのは直系卑属の時と取り分が変わる点です。

それぞれの相続分は直系尊属が3分の1、配偶者が3分の2となります。3000万の遺産を両親と配偶者が相続するなら、両親はそれぞれ500万円ずつで配偶者が2000万円です。


三番目の順位

両親も子供も孫もいないとなると、兄弟姉妹が相続人となります。ここでの取り分はさらに少なくなり、兄弟姉妹が4分の1、配偶者が4分の3です。被相続人に兄が一人いて遺産が3000万なら、兄が750万で配偶者が2250万となります。

仮にこの兄が被相続人より先に亡くなっていて子供がいた場合は、兄の代わりに甥っ子か姪っ子にあたるこの子が相続人となれるのですが、これが代襲相続です。

代襲相続

相続で最も優先される子供が被相続人より先に亡くなったり、交通事故で被相続人と一緒に亡くなったりした場合に、孫が子供の代わりに相続人となります。先の兄弟の例と同じく、これがオーソドックスな代襲相続の例です。

言葉としては代わりに相続人になるというもので、代襲相続はそのままの取り分となります。

試験でポイントとなるのは死亡以外に代襲相続が生じるパターンで、たとえば、子供が遺産目当てに親を殺害した場合、欠格事由となり、代わりに孫が相続人となります。

さすがに直接的な行為にはでないけど、被相続人は「生きている時に子供からさんざんいじめられたから遺産をやりたくない」と考えるケースもあるかもしれません。

このような場合は生きている間に被相続人自らが「子供に相続させないで」と家庭裁判所に請求可能ですし、遺言を残すこともできます。相続人の選りすぐりと言うと変ですが、これを廃除といい、これによって子供は相続人になれなくなり、孫が相続人になるわけです。

ただし、廃除はいじめられたなどの、請求する正当な理由が必要で「一番かわいがってる子だけに遺産をやりたいから」といった理由は認められません。

承認または放棄の選択

相続といっても財産だけでなく借金なども背負うことになりますので、相続人だからといって、相続したくないケースもあるわけです。

そこで、相続人は相続開始を知ってから3ヵ月以内に「単純承認」「限定承認」「放棄」のいずれかを選ばないといけない決まりがあります。相続が始まってから3ヶ月ではない点と、選んだ後のキャンセル(撤回)は不可能な点、選ばなかったら単純承認扱いになる3点は要チェックです。

単純承認は良いことも悪いことも全て相続されるもので、相続分には財産はもちろん借金も含まれます。

限定承認は借金などを遺産から精算して、もしも返しきれないなら残りは相続しません。莫大な借金があるなら一番いいように感じますが、相続人全員が共同で選ばないといけない決まりがあります。ある人は限定承認で、ある人は単純承認とはできないのです。

放棄は文字通り財産も借金も受け継がないことです。言葉は簡単ですが、代襲相続が発生しない点だけおさえておきましょう。被相続人の子どもが放棄をしたら孫は代襲相続できませんし、放棄によってそれぞれの取り分が変わる点も注意が必要です。

遺産分割のポイント

相続の優先順位と相続分について簡単に説明しましたが、現実にはキレイに一人何円となることはありませんし、お金以外にも土地や家、車といった割れない財産があります。ですから、何を誰に?といった取決めが必要となってくるわけです。

各々の相続分を決めることを遺産分割といい、分割される前の遺産は相続人全員の共有財産扱いになります。

実際に分割をするにあたっては遺産分割協議、つまり話し合いが必要となるのですが、これは相続人全員の同意のもとで請求できます。期限などの制限はなくいつでも分割請求可能なものの、遺言で遺産分割を禁止されている場合は請求できません。

遺言については別にくわしく解説していますが、遺産分割の禁止は遺言でしかできない点もおさえておきましょう。

相続は聞きなれた言葉の割に覚えることも多いですから、用語の理解もしつつゆっくり学習してみてください。