高さに関する制限【日影規制の適用区域と斜線制限の種類・適用範囲】

覚えておきたい高さに関する規制

極端に高い建物を建てると火災時に危険ですし、日当たりも悪くなって近隣住民にも迷惑がかります。そこで、建築物の高さに関しても建築基準法において制限が定められています。

特に重要となる高さの制限は「日影規制」と「斜線制限」ですが、先にそれらとは別に覚えておきたい規制について解説します。


覚えておきたい高さ制限2つ

・木造建築物の耐火性能
木造建築物は燃えやすい木でできているので、建築には耐火性能が求められます。これに建築物の高さが関わり、特に高さ13mまたは軒の高さ9mを超える建物の主要構造部に木材を用いる場合には耐火性能が要求されます。

なお、暗記すべきなのは高さの数値で、細かい耐火性能の内容まで覚える必要はありません。

・低層住居の高さ制限
第一種、第二種低層住居専用地域は主に低層住宅の環境を保護するのが目的の用途地域です。ですから、原則として建物の高さを10mか12mを超えてはいけません。10mか12mのどちらなのかは都市計画によって定められます。

特定行政庁の許可があれば、例外的に10mか12mを超える建物の建築も可能です。特定行政庁が許可するパターンも細かくありますが、これも特に覚えなくでも大丈夫でしょう。

日影規制(にちえいきせい)の適用区域

日影規制とは「日影による建築物の高さの制限」です。要するに、長い時間隣地に日かげができるような高い建物を制限するためにあります。

ただし、あらゆる建物が対象となるわけではなく、地域と建物の規模によって適用されるか否かが決まります。

対象地域は住居系の用途地域と近隣商業、準工業地域、それと用途地域外です。これらの地域の中から地方公共団体が条例によって適用区域を指定します。

また、適用区域内で対象となる建物の規模は以下のようになります。

・第一種第二種低層住居専用地域
軒の高さ7m超え、または地階を除く3階建て以上の建物

・第一種第二種中住、第一種第二種住居、準住居、近隣商業、準工業地域
高さ10m超えの建物

・用途地域外
地方公共団体によって上記の制限から指定される

日影規制の対象とならない、商業、工業、工業専用地域のほうが数が少ないので覚えやすいと思います。

対象となる地域と建物の規模は上記のとおりですが、以下のような例外パターンもあります。

・同一敷地内に2つ以上の建物がある場合、それらを1つの建物とみなして日影規制が適用される

これは建物の高さを足すという意味ではなく、片方に適用されたらもう一方にも適用されるという意味です。

たとえば、近隣商業地域の敷地に8mと12mの2つの建物があったとします。日影規制の対象は10m超えの建物=12mの建物だけですが、同じ敷地にあるために本来なら対象外となる8mの建物も対象となるわけです。

・適用対象区域外でも高さ10mを超えていて、冬至の日に対象区域内に日かげを生じさせる建物は対象区域内の建物とみなされる

これはそのまんまの意味ですが、日影規制の対象区域に日かげを生じさせるという点がポイントです。冬至の日は一番日照時間が短いため、このような例外が設けられています。

斜線制限の種類と適用範囲

斜線制限というのは、地面から建物に向かって斜めに線を引いた時にその線の内側に建物がおさまらないといけないという制限です。

斜線制限は「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」の3種類あります。

太陽の動きによって建物の西から北、そして東に影ができるため、3タイプ規定されています。西側、東側となっていないのは、立地によって西側が道路の時もあれば隣地の時、逆に東側が道路や隣地の時もあるからです。

いずれの斜線制限も空間、風通し、日当たりの確保が目的になります。

大事なのは各制限の適用範囲です。

・道路斜線制限は用途地域内外、都市計画区域内、準都市計画区域内で適用されます。つまり、適用されない用途地域はありません。

・隣地斜線制限は、31mまたが20mを超える建物に適用されます。言い換えるなら、そもそもそんな高さの建物を建築できない第一種第二種低層住居専用地域では適用されないわけです。

・北側斜線制限は、第一種第二種低住、第一種第二種中住だけ適用されます。ただし、第一種第二種中高層住居専用地域で、日影規制の対象となっている建物には北側斜線制限は適用されません。