担保責任の種類と契約解除・損害賠償請求可能不可能のパターン

担保責任は丸暗記で乗り越える

物を買った後に「聞いていた話と違う」なんて感じた経験が1度はあるのではないでしょうか。

買い手にも落ち度がある場合はともかく、どう考えても売主に問題があったなんて時は責任を追及すべきです。しかし、具体的にどういった責任が問えるのか?自分にも過失があるときは?こういったことを学んでいくのが担保責任です。

この分野はパターンを丸暗記していないと得点するのが難しいですから、何としても全てを暗記するように頑張りましょう。以下の内容は暗記必須項目です。


他人物の売買

担保責任の話に入る前に「人の物でも売買できる」という点を覚えておきましょう。あまりイメージがわかないものですが、赤の他人の所有物件でも売買契約は有効となるのです。

有効というと関係ない人の物件を手に入れれそうですが、人の所有物の売買契約では所有権は移転しません。この場合の有効というのは、買い手が売り手に対して「売るといった物件を手にして自分に引き渡すことを請求できる権利」があるという意味になります。

もしも他人の物件が手に入らなかった場合、買主は契約の解除が可能です。これは売主が扱う物件が他人の物であることを知っていても知らなくても関係ありません。つまり、善意でも悪意でも契約の解除ができるのです。

この解除は買主側からはもちろんできますが、売主が善意(人の物だと思わずに売った)の場合だけ売主からもできます。

それと、損害賠償請求は買主が善意の場合に限り可能です。もしも買主が人の物件と知っていたら(悪意なら)手に入らない可能性が高いと思ってわざと売買契約を結んだりするケースも考えられるため、悪意では損害賠償請求はできません。


一部が他人の物だった場合

買った物件がまるまる人の物ではないけど一部分だけが他人の物だった場合は、買主が善意か悪意かで変わります。

まず、買い手が善意であるならば損害賠償請求が可能です。解除に関しては「もし一部が人の物と知っていたら契約しなかった」という場合にできます。

「他人の物件が一部あっても、メインで欲しいのははここだからどっちにしろ買ってた」という場合は、代金の減額請求ができます。つまり、他人の所有部分に相当する代金の値下げ請求が可能なわけです。

一方、悪意の場合は事前に知っていたのですから、損害賠償請求も契約の解除もできません。しかし、代金の減額請求は可能です。「今は他人の物だけどいざ売るときにはきちんとした状態で売ってくれるよね」と思うこともあり、それができないなら「まけてよ」というわけです。

なお、目的物の一部分が他人の物だった場合の責任追及は善意でも悪意でも1年以内に限られます。善意なら人の物と気づいてから1年、悪意なら契約した時から1年です。


数量の不足

買った土地の測量をしたら契約内容より狭かった時などが数量不足にあたります。これも買主が善意か悪意かで変わります。

善意の場合は一部他人の物だった場合と同じく、損害賠償請求ができます。解除も同様に「もし足りないと知っていたら買わなかった」という場合には可能です。

そして「どっちにしろ買っていた」という場合は、代金の減額請求ができます。数量不足に気づいてから1年以内という責任追及可能期間も上記と同じです。

目的物の一部が他人の場合と違う点は買主が悪意だったときで、この場合は損害賠償請求や解除はもちろん、代金の減額請求もできません。減額請求できない理由は、目的物が足りないと知っていながら代金に納得して契約したのに、後で減額を求めるのはおかしいからです。


担保物権がついていた場合

買った土地に抵抗権などの担保物権がついていた場合、買主は契約の解除ができます。これも他人物売買と同じく、善意か悪意かは関係なく解除可能です。買い手が悪意でも解除できるのは、抵当権を実行されないように売主が被担保債権の弁済をすれば済むだけの話だからです。

買主が被担保物権について知っていても知らなくても、借金の返済をしない理由にはならないと考えると納得できるのではないでしょうか。

ただし、被担保債権を理由に契約を解除できるのは、抵当権が実行されて土地を失った時(所有権がなくなった時)だけです。

損害賠償に関しても善意悪意関係なく請求できます。借金を返済しないせいで抵当権を実行されて迷惑をこうむったのですから、買う時に知っていたか知らないかは関係ないのです。

それと、買い手は売主の代わりに借金を返済して抵当権を消滅させることもできます。この場合は売主から借金の弁済を受けることが可能で、これを償還請求あるいは求償といい、善意も悪意も関係なく可能です。

瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)

瑕疵とは欠陥という意味で、欠陥住宅なんて言葉は聞いたことがあると思います。買った家の屋根裏の柱がボロボロだった時などの責任追及が瑕疵担保責任にあたります。

瑕疵担保責任の場合、売り手が何も事情を知らない、つまり善意の場合に限り損害賠償請求が可能です。契約の解除をするには、売買契約の目的達成不可という条件が必要になります。売買契約の目的達成不可というのは、欠陥がひどすぎて家としての機能がなく、とても住めない状態などを指します。

ただし、たとえ欠陥住宅だったとしても何十年も前の物まで責任追及されると売主も困ります。ですから、損害賠償請求も契約の解除も瑕疵発見から1年を超えるとできません。言い換えるなら、何も知らない人が欠陥に気づいてから1年以内なら、いずれの責任追及も可能となります。

ちなみに、事前に瑕疵を知っていた場合(悪意)は、損害賠償請求も契約の解除もできません。欠陥を承知で契約を結んだのに、責任追及されても困るからです。

また、瑕疵担保責任に関しては特約をすることもできます。売買契約時に「欠陥があっても売り手は瑕疵担保責任を負わない」と決めることができるわけです。ただし、この特約は売主が瑕疵について善意でなければ効力を発揮できません。ようするに、欠陥を知っていたけどわざと言わずに特約付きで契約しても特約は無効となり、買主は責任追及できるのです。

もう一つ、新築住宅における瑕疵担保責任です。新築住宅の時点で欠陥があるなんて通常は思いません。ですから、新築住宅に限っては引き渡しから10年は損害賠償請求も解除も可能で、さらに修理を要求する(瑕疵修補請求)ことも10年間可能です。

10年という期間はお互いに合意すれば20年まで伸ばせますが、5年に縮めたりする特約は無効となります。

なお、新築住宅の瑕疵担保責任は、壁や屋根といった主要部分に隠れた瑕疵がある場合に限り認められます。

目的物に地上権がついていた場合

買った物件に地上権などの用益権がついていた場合も、瑕疵担保責任と同じになります。

善意であれば損害賠償請求ができ、さらに売買目的の達成不可ならば契約の解除も可能です。賠償請求、解除のいずれも、権利の存在を知ってから1年以内がリミットなのも瑕疵担保責任と同じになります。

このケースにおける売買目的の達成不可というのは権利によるものです。たとえば、家を建てたくて土地を買ったのに地上権のせいで建てられなかった時など、権利が邪魔をして買った目的が達成できないとこれに該当します。

買主が悪意だった場合も瑕疵担保責任とまったく同じで、権利の存在を承知で買ったわけですから損害賠償請求も契約の解除もできません。