抵当権の性質(物上代位性・不可分性・随伴性・付従性)

抵当権の性質

抵当権は宅建試験の中でも難しい話が多く、苦手と感じる方も多いのではないでしょうか。特に本試験でも出題されやすくややこしいのが、抵当権のもつ性質です。

これは「物上代位性」「不可分性」「随伴性」「付従性」の4つに分けられます。

言葉だけを聞いても意味がわからないかもしれませんが、抵当権の特徴、他にあたえる影響といったイメージでまずは4つの性質があると思っておきましょう。

抵当権の性質を覚えておくと、他で抵当権が絡むケースが出てきても話を理解しやすくなります。具体的にこれらがどういうものなのかをそれぞれ見ていきましょう。

物上代位性

まずは抵当権の物上代位です。物上代位とは特定の物や権利が他の物や権利に及ぶことを意味するのですが、ここでは抵当権の話なので権利が及ぶと考えるとわかりやすいと思います。

細かいことは抜きにしてもっと単純にいうと、抵当権が他の権利に影響を与えて上にくると考えてみてください。

抵当権を設定している家の持ち主がお金を借りたとします。持ち主が借金を踏み倒すと債権者から抵当権を実行されて家は売り出されるわけですが、もしも持ち主が先に家を売ったらどうなるのか?という問題です。

家を売ることでお金が手に入るものの、このお金は本来、抵当権が実行され競売に出された後に弁済(借金払い)に使われるものになります。言い換えるなら、抵当権の設定された家が代金請求権という別の権利に変化した状態です。

そして、この代金請求権は、売った持ち主と抵当権によって弁済されるはずだった債権者2人の権利と考えられます。ですから、債権者(抵当権者)は家を売った代金を差し押さえることも可能となります。

ようするに、抵当権が消えずに他の権利(ここでは代金請求権)の上に存在するという状態で、これが物上代位です。

売却以外にも、滅失や賃貸借などによって債務者が人からお金を得る場合、債権者は差し押さえができます。差し押さえは抵当権だけでなく質権などのその他の担保物権でも可能ですが、注意したいのは差し押さえは支払い前という点です。

家を売った代金にしろ災害の保険金にしろ、債務者がお金を受け取る前に差し押さえないと物上代位はできません。いくら債務者とはいえ、受け取った後だと自身の財産かがわからないという理屈が背後にあります。これは覚えなくてもいいですが、支払いは差し押さえ前という点は覚えておきましょう。

不可分性

続いては抵当権の不可分性です。

不可分性とは、簡単にいうと借金払いが全部済むまで目的物に抵当権は残るということです。

たとえば、家に抵当権を設定した債務者が借金の9割を返済したら、家の抵当権は9割消えるかというとそうはなりません。完済するまでは家全体に抵当権の効力は及ぶというわけです。

土地の場合も同様で、要するに弁済が完了するまで抵当権は目的物全体にあり、途中で効力の及ぶ範囲が消えないという性質が不可分性になります。

随伴性

3つ目は抵当権の随伴性です。

これはたとえば、債権譲渡をした時に抵当権も一緒に移転する性質です。債権を渡された譲受人は債権を担保できるようになります。

意味の意味自体はあまり難しくありませんが、テキストや過去問で複雑なパターンが載っている場合もあるので学習必須です。

付従性

最後は付従性ですが、これも難しくありません。

抵当権の付従性とは一言で言うなら借金があれば成立するし、ないなら消えるということです。

抵当権というのはそもそも債権を担保するための権利(もしもの時に借金を返してもらうための保険)ですから、たとえば抵当権を設定した上での契約が無効ならば成立しませんし、借金がなくなれば消滅します。

このことを専門的には、被担保債権の成立あるいは消滅によって、自身も成立あるいは消滅するといいます。

付従性の存在が問題を複雑にしているケースは多々あるので、言葉の意味以上のことをしっかりと過去問などで学習しておきましょう。

以上で抵当権のもつ4つの性質は終わりですが、これらはいずれも抵当権のみならずその他の担保物権にもあてはまる性質ですから、抵当権のみと勘違いしないように気を付けてください。