抵当権の効力と法定地上権の成立要件

抵当権とは?

お金を借りたらきちんと返すのは当然ですが、なかなか返してくれない人や踏み倒す人もいますから、貸す側としては万が一のための力が欲しいと思うものですよね。力といっても決して暴力ではなくて合法である必要があり、こうした時に役立つのが抵当権です。

たとえば、家に抵当権を設定した人物がお金を借りたけど踏み倒したりすれば、債権者(貸した人)は抵当権を実行して債務者(借りた人)の家を競売に出せます。家を売り出せば誰かが買ってくれるので、その代金を債権者は受取り無事にお金を返してもらえます。

要するに、抵当権はもしもの時にも弁済を受けれる権利というわけです。聞きなれない方もいるかもしれませんが「抵当のある家が~」なんて会話は日常でも使われています。

抵当権は物権変動の一種と考えられるため、設定するのに条件はなく意思表示さえあればいいものです。契約書や登記なども必要なく、口頭で伝えるだけで設定は完了します。

登記は権利部にされるわけですから、当然申請義務もありません。しかし、もしも抵当権を設定した不動産を第三者に譲渡したりした場合は、登記が対抗要件となります。つまり、当事者同士では意思表示のみで抵当権の効力は生まれるものの、第三者が絡むと登記をしておく必要がでてくるのです。

では、抵当権の効力とはいったい何に及ぶのか?というのも覚えておきたいポイントになります。

付合物と従物に及ぶ効力

抵当権が実行されて家が売り出されることになった時、家の中にはベッドやらテレビやら冷蔵庫やらがあるわけですが、これらは一緒に売られません。売られるのはあくまで家そのものと、家を作るパーツだけです。

このパーツは付合物(窓などの家を構成するもの。なくなると家としての機能をなさない)、従物(障子など、なくても家としては機能するけど家の一部)といいます。2つの細かい違いは知らなくても問題ありませんが、従物は抵当権設定時からあるものだけに及ぶ点だけ注意です。

なお、もともと建物がある土地に設定された抵当権の効力は土地だけに及びます。建物は土地の付合物でも従物でもなく、それぞれ別ものだからです。

ただし、抵当権設定時に土地上に建物があり、さらに土地と建物の所有者が同じ場合は法定地上権が成立します。

法定地上権

建物のある土地の抵当権が実行された場合、土地だけが競売にだされて第三者の手に渡ります。建物と土地の持ち主は同じなのですから、「土地は人のもので建物は自分のもの」という状態になってしまいます。

建物の所有者はともかく土地の買い手としては「いやいや、家どかせよ」と思うわけですが、こうした場合には、元の持ち主が自動で地上権を取得できるのです。この地上権が法定地上権と呼ばれるもので、法律上取得して当たり前の地上権とみなされています。

重要なのは法定地上権が成立する条件と、建物の登記に関係なく成立する点です。

成立条件は上でサラっと書いてしまいましたが、抵当権設定時に土地上に建物があり、かつ抵当権設定時に建物と土地の所有者が同じであることです。言い換えるなら、抵当権を設定した後で土地や建物が譲渡されたり、建物が壊されたりしても法定地上権は成立します。

法定地上権はこんなに単純な話では終わらないくらい細かい部分があるのですが、宅建に関しては上記のポイントをおさえておけば大丈夫です。

抵当権に関するその他のポイント

抵当権を設定した本人(抵当権設定者)が、抵当権を使われたくないからという理由で家を燃やそうとしたら、抵当権によって弁済を受けれる人(抵当権者)は妨害排除請求ができます。これは簡単にいうと、抵当権が設定された目的物(家や土地)を壊したり傷つけたりすることをやめさせる権利です。

また、抵当権は土地や建物などの不動産以外にも設定できますが、賃借権には設定できません。

さらに、畑などに抵当権を設定した場合、畑そのものや木には効力が及びますが、収穫できる実(天然果実)には及ばないのです。