通常の保証契約における保証人の「条件・責任・保護」と保証債務の性質

保証人の条件

「保証人になったせいで余計な借金を背負わされた」「どんなに仲のいい人の頼みでも保証人にだけはなるな!」なんて話を聞いたことがあるかもしれません。それほどまでに保証人というのはリスクのある立場です。

お金を貸す側からすると保証人がいることで返済してもらえない心配はなくなりますが、誰でも保証人となることはできません。

厳密には誰でも保証人になれるのですが、それはお金を貸した人が納得した場合に限られます。つまり、お金を借りる人が保証人を立てる義務がある時、債権者が保証人を指名したかどうかで保証人の資格は変わるというわけです。

・債権者が保証人を指名した場合
貸した人自らが指名するならば、誰でも保証人になれます。スカンピンでもOKです。

しかも、どういった事情があっても債権者は保証人の変更を請求できません。債権者自身が選んだ人なのですから、たとえお金持ちを保証人に指名して、その人が破産したとしても変更は認められないのです。

・債権者が指名しなかった場合
債権者からの指名がなかった場合は、弁済能力のある人でないと保証人にはなれません。これを弁済資力(借金を返せるだけの資金力)を有するといいます。しかし、いくらお金をたくさん持っていても、その人が制限行為能力者だったりしたら保証契約の取り消しができてしまいます。ですから、行為能力を持っていることも保証人の必須条件です。

まとめると、債権者からの指名がない場合は「弁済資力および行為能力の両方を持つ人」が保証人の資格がある人となります。

保証人の変更請求は指名した場合と違って条件つきで可能です。その条件とは保証人が弁済資力を失った時で、破産してお金がなくなったら「違う保証人を用意して」と請求できます。

保証人になった後に制限行為能力者になった場合は、保証契約の取り消しができないため、変更請求もできません。

保証人の責任

保証人というのは重い立場に立たされるため、保証人の契約は必ず書面でしないと効力を発揮しません。保証人になる契約を保証契約といいますが、これは債権者と保証人との間の契約であり、債務者の意思は関係ないものです。

現実には借金をする人が誰かに保証人をお願いするわけですが、だからといって債務者と保証人の契約にはなりませんから注意しておきましょう。

保証契約は口だけでは済ませられないほど大事なものですが、それによって保証人になった人にどれほどの責任があるかという点も重要です。

ある人がお金を借りて他の誰かを保証人にした場合、債務者がお金を払わないなら、当然、保証人が支払いをしないといけません。

保証人が支払うべきお金は元本(最初に借りた額)だけでなく、利子などのあらゆるものが含まれています。たとえば、債務者が何かをやらかして違約金やら損害賠償などが発生した場合は、そうしたお金も保証人が支払う必要があるのです。

それほどまでに保証人の責任は重くなるわけですが、保証人自身が最初からそれを承知していた場合はともかく、契約締結後に勝手に借金が増えていったらたまりません。ですから、保証契約をした時の債務額が勝手に増えたりはしないのです。

保証人の保護

責任ばかり押し付けられては保証人になった人がかわいそうですし、そもそも債務者がお金を返さない場合のピンチヒッターが保証人です。そのため、理不尽な請求などに対しては抵抗できるだけの権利が認められています。

宅建で特に重要な保証人の権限は「催告・検索の抗弁権」です。

催告の抗弁権とは、債権者からの催告(お金返して)に逆らうといったイメージで、債権者が債務者への請求をせずに保証人に請求してきた場合「先に債務者に言えよ」と逆らえるわけです。

検索の抗弁権とは、債権者が保証人に催告した時に「債務者はお金あるからまだ自分の出番じゃない」と逆らえる権利になります。

検索の抗弁権は、債権者が債務者に催告しても弁済がもらえなかったために保証人に催告した場合でも行使可能です。ただし、保証人は債務者がお金を持っていることを証明する必要があります。

この保証人が証明すべき債務者のお金のことを「執行の容易な財産」といい、差し押さえが可能な財産を指します。差し押さえが簡単であればいいので、債務全額である必要はなく、相当の現金でも可能です。

しかし、不動産は差し押さえが簡単とは言えないですから、執行の容易な財産にはなりません。

保証人のもつ権限としてもう一つ大事なのが相殺です。たとえば、お金を借りた人が貸した人に対して以前に貸しがある場合に保証人は相殺ができます。債権者と債務者が互いに借金をしあっているような状態(債務者の債権を反対債権という)で、保証人としてはお互いの借金を相殺してくれれば債務を回避できるわけです。

そのため、債務者だけでなく保証人からも「君たちの借金お互いチャラにしなさい」とすることが許されています。この相殺できる権限を保証人の相殺援用権といいます。

保証債務の性質

主債務者の保証人になると、自分の借金ではないにしてもお金を払わないといけない状態になります。これが保証債務を抱えている状態なわけですが、この債務には特殊な性質がありこれらもおさえておきたい項目です。

保証人はもしもの時には債務者の代わりに弁済する立場ですが、払ってくれないなんて事態もあるかもしれません。主債務者がきちんと弁済すればいいという正論は置いておいて、主債務者は保証人としての役目を間違いなく果たしてくれるための取り決めができるのです。

具体的には保証債務の違約金や損害賠償の定めがあり、万が一保証人が約束を破ったらこれに従って支払いを求められます。

なお、これは債務者がもつ元の債務に対する決まりではない点に注意です。

また、保証債務には抵当権と同じく付従性と随伴性の2つの性質があります。「付従性」があるため、主債務がないと保証債務もありませんし、主債務が消えると保証債務も消えます。「随伴性」があるため、主債務が譲渡されると保証債務も一緒に変動するわけです。

保証債務の性質としてもう一つ、分別の利益があります。これは例えば、保証人が2人いて保証債務が1000万円なら、債権者が保証人1人に対して請求できる金額は500万円になるという意味です。

債務者はもちろん1000万円請求されますが、保証人は弁済額も半分で済みます。保証人の人数は2人でなくてもよく、2人以上であればその人数で保証債務を頭割りをします。

もしも保証人の1人が弁済したら、その人は主債務者に対して求償できますが、他の保証人に対する求償はできません。これが分別の利益のルールです。