請負人と注文者の義務・権利
請負とは、仕事の完成を約束する請負人と報酬を支払う注文者による契約を指します。家の建築をする大工さんやオーダーメイドをイメージするとわかりやすいのではないでしょうか。
請負契約も他の契約と同様に意思表示だけで成立しますから、契約書の作成は必要ありません。とはいえ、契約が成立したら請負人と注文者はそれぞれ義務を背負うことになりますし、一定の権利も有します。
それぞれの義務と権利
請負人は「先に金を払わないと注文した品は完成しない」とは言えません。言い換えるならば、請負人は報酬を受け取る前に必ず注文品を完成させる義務を負うわけです。
注文者は仕事の結果に対して報酬を支払う義務を負いますが、その時期は完成品の引き渡しと同時になります。つまり、完成品の引き渡しと報酬の支払いは同時履行の関係にあるのです。
同時に履行が成立すれば請負契約は終了となりますが、オーダー通りの品ができない場合も当然あります。こうした時に注文者は「瑕疵修補請求」「損害賠償請求」「契約の解除」のいずれかが可能です。
「瑕疵修補請求」というのはようするに修正依頼のことで、スーツのサイズ違いの修正などがあります。契約の解除は目的を達成できないほど重大な瑕疵がある場合だけ可能で、修正不可なレベルだけ解除できるという意味です。
「瑕疵修補請求」「損害賠償請求」「契約の解除」のどれを行うかは注文者が選びます。重大な瑕疵がないのに解除はできませんが、解除の条件を満たしたうえで修正を依頼するといったことは可能です。
ただし、これらは動産に限った話で、目的物が建物などの不動産の場合「解除」はできません。たとえどんなに重大な瑕疵があったとしても、不動産は解除不可となっています。
その代わりではないですが、担保責任の追及期間が売買契約の場合よりも長く、引き渡しから①鉄筋コンクリートなら10年②木造新築の主要部分なら10年③木造の②以外なら5年となります。
なお、担保責任を負わない特約も有効ですが、請負人が瑕疵について悪意の場合は特約も無効となり、担保責任を追及可能です。
請負の終了
原則として請負契約の解除は請負人からはできません。注文者が破産した場合など、例外的に解除できるケースもありますが覚えなくても大丈夫です。
重要なのは、注文者が注文品完成前に途中で解除したくなったパターンです。この場合、途中までの報酬を支払うことで解除が可能で、注文品が動産・不動産かも関係ありません。
担保責任の解除と違って、家が完成しなくてもそれまでの報酬を払えば解除できる点に注意です。ただし、目的物が完成してしまったら引き渡し前でも解除はできないので、完成前という前提を守る必要があります。
途中までの報酬を払うことを本試験では「損害を賠償」すると表現するので、この点も覚えておくといいでしょう。
また、目的物が可分(分割できること)の場合は、未完成の部分についてだけ解除することもできます。
注文品の所有権の帰属
注文品が動産でも不動産でも、その所有権は注文者と請負人のどちらが材料を提供したかで変わります。
注文者が材料の全部または主要部分を出した場合は、引き渡す前でも目的物の所有権は注文者のものです。
一方、請負人が材料の全部または主要部分を出した時は目的物の所有権は請負人に帰属して、引き渡しによって所有権が注文者に移転します。ただし、請負人が材料を提供していても仕事完成前に注文者が報酬を支払った場合は、引き渡し前から目的物は注文者のものになります。
この例外パターンは意外と盲点なので注意しておきましょう。