容積率【計算方法・用途地域ごとの数値・前面道路・複数地域】

容積率の基本計算

容積率も建ぺい率と同じく、火災による延焼防止や建物の環境を良好に保つために設けられる制限です。建ぺい率が敷地に対する建築面積の割合なのに対して、容積率は敷地に対する建物の延べ面積を指します。

延べ面積というのは建物にある各床面積の合計で、たとえば、50㎡の床面積の部屋が3部屋あったら、その建物の延べ面積は150㎡になります。

容積率の基本的な計算方法は「建物の延べ床面積÷敷地面積」です。延べ面積150㎡の建物が100㎡の敷地にある場合は、150÷100=10分の15が容積率になります。逆に、容積率10分の15から考えると、100㎡の敷地には延べ面積最高150㎡までの建物なら建てれるということです。

ですから、50㎡の部屋3つではなく、70㎡の部屋と80㎡の部屋1つずつの建物でも建築可能になります。

ただし、住宅用の建物で地下室がある場合は、住宅用の地上部分の合計面積3分の1までは延べ面積にはカウントされません。また、マンションなどの共用部分(廊下や階段)の床面積も延べ面積には含めないので計算間違いに注意です。

地域ごとの容積率の限度

容積率も建ぺい率同様、用途地域によって最高限度が違います。以下、用途地域別の数値です。

・第一種第二種低住
10分の5~20の中から都市計画で定める

・第一種第二種中住、第一種第二種住居、準住居、近隣商業、準工業地域
10分の10~50の中から都市計画で定める

・工業、工業専用地域
10分の10~40の中から都市計画で定める

・商業地域
10分の20~130の中から都市計画で定める

・用途地域外
10分の5~40の中から特定行政庁が定める

分子の幅は厳密には細かく決まっていますが、建ぺい率の数値とちがって細かく覚える必要はありません。細小と最大の数値だけ覚えておくだけで十分です。

また、上記以外の区域では原則として容積率の制限はありませんが、条例で制限される例外もあります。

逆に、敷地内や敷地の周囲に空き地がある場合など、安全面や交通面、防火面で問題がないと認められた時は、特定行政庁の許可によって容積率が緩和されることもあります。

前面道路の規制

容積率は地域の制限とは別に、前面道路の幅が12m未満の場合にも計算方法が変わります。住居系の用途地域なら「道幅×10分の4」、それ以外は「道幅×10分の6」が算出方法です。角地で前面道路が複数ある場合には、広いほうの道幅を規準に計算します。

さらに、都市計画法で定められた容積率の限度と数値が違う場合は、小さい数値がその敷地の容積率になります。

説明だけでは混乱してしまうので、少し練習してみましょう。

たとえば、10mと8mの道路に接した準住居地域にある100㎡の土地に都市計画で10分の50の容積率が定められたとします。

前面道路を考慮した容積率の計算は、10(広いほうの道路)×10分の4(住居系)=10分の40です。

都市計画法で定められた10分の50より小さいので、この敷地の容積率は10分の40になります。つまり、延べ床面積400㎡までの建物なら、当該敷地に建てていいとなるわけです。

地域ごとの数値は覚えなくても問題ないですが、道幅にかける数値10分の4と10分の6は暗記しておきましょう。

複数の地域にまたがる場合の計算

複数の地域にまたがる場合の容積率の計算方法も建ぺい率とほとんど同じです。2つの土地それぞれの面積と、指定された容積率をもとに計算します。もちろん、道路があるときはそれも考慮した上で計算を始めるので注意です。

たとえば、12mの道路に面した200㎡土地のうち、120㎡が準住居地域にあり、指定容積率(都市計画で定めた容積率)が10分の40とします。残りの80㎡の土地が近隣商業地域にあり指定容積率が10分の30だった場合、以下の計算が必要です。

①当該敷地には延べ床面積いくつまでの建物なら建築可能?

道路幅は12mジャスト=12m未満ではないため、関係ありません。『120×10分の40(準住居地域)』+『80×10分の30(近隣商業地域)』=720㎡

この200㎡の土地には、延べ床面積720㎡までの建物なら建築可能となります。

②敷地全体の容積率は?

『10分の40×200分の120』+『10分の30×200分の80』=10分の36となり、これが当該敷地の容積率です。

逆算してみると、10分の36は「20分の72=200分の720」で、200㎡の敷地に対して延べ面積720㎡が求められます。

容積率に関して覚えておきたいのは以上です。

容積率は建ぺい率と定義も似ていて混合しやすいうえに一緒に登場するケースも多いですから、それぞれの内容を把握して違いをしっかりと頭に入れておきましょう。