区分所有建物の敷地利用権と登記の流れおよびその効力

敷地利用権について

区分所有法自体、マンション管理士の影響もあって宅建では出題数が減少気味です。にもかかわらず覚えることは多いため、費やした時間の割に得点力アップにはあまり貢献してくれません。

中でも区分所有建物の登記に関しては、苦労して勉強しても試験対策の意味をなさないケースもあります。

一応、出題範囲に含まれてはいるので、可能性のあることは全部やっておきたい方は学習しておくと「やっててよかった」となるかもしれません。


敷地利用権とは?

区分所有建物の登記を学ぶ前に、敷地利用権を覚えておく必要があります。

敷地利用権は、マンションの専有部分の所有者が敷地(マンションが建っている土地)に対して有する権利です。専有部分に対する区分所有権とは別物ですが、専有部分をもっているからそのマンションの敷地に対する権利をもっています。

部屋があるから成立する権利のため、規約で別段に定めをしていない限り、専有部分と敷地利用権を分離させたりはできません。

区分所有建物の登記の流れ

区分所有建物(分譲マンション)でも、新築であれば表題登記は必須になります。注意したいのは建物だけに関する登記以外に、建物内に属する全ての区分所有建物の表題登記をまとめてしなければいけない点です。

つまり、マンション名と各部屋(〇号室など)を一緒に表題部に記録する必要があります。

建物の登記があれば土地の登記は必要なくなります。なぜかというと、区分所有建物の専有部分と敷地利用権は分離できないからです。建物と各部屋の登記があるから、その建物が建つ土地の登記までしなくていいと考えるとわかりやすいと思います。

しかし、表題登記だけでは足りず「建物が区分所有建物である登記」と「土地が敷地権の対象である登記」をしないといけません。

ここがかなり難しい部分で、以下の流れで登記をします。

①区分所有者の所有権の登記
マンションの敷地は各区分所有者の共有地ですから、各所有者の所有権の登記をします。部屋の住人が土地所有者であると権利部に登記をするわけです。

これによって、区分所有者の敷地利用権が敷地権に変わります。

②敷地権についての登記
建物の敷地利用権が敷地権に変わったことを登記します。敷地権についての表示登記といって、各専有部分の表題部に記録しないといけません。

③敷地権である旨を登記
再度、土地登記記録の権利部に敷地権である旨を登記しないといけませんが、これは職権でされます。ようするに、この土地は区分所有建物の敷地権の対象であると知らせるわけです。

これにより、登記を見るだけでこの土地上に区分所有建物があることがわかります。

登記によって生じる効力

上記①~③の流れで登記が完了したら、専有部分と敷地権は一緒になるので、土地の登記は不要になります。同時に以下、3つの効力が発生します。

・分離処分登記の禁止
土地が敷地権の対象となるよりも前に登記原因があった場合を除き、原則として専有部分と敷地権を分離させる登記はできなくなります。

・専有部分の登記が敷地権にも及ぶ
たとえば、専有部分の所有権移転登記をすると敷地権の移転にも対抗力が生まれるように、建物の登記でそのまま土地の登記をしたことになります。これが「区分所有建物には土地の登記は不要」という意味です。

・土地登記の禁止
敷地権は分離させることもできなければ、登記する必要もありません。つまり、敷地権には登記が禁止されることになります。

ただし、土地が敷地権の目的となる前に登記原因があった場合はこの限りではありません。

区分所有建物の登記に関しては以上です。過去問でもたまにしか見かけませんし、出題される可能性も低いですから、余裕があれば学んでおく程度でも十分だと思います。