営業保証金のポイント【供託・保管替え・還付・追加供託・取戻し】

営業保証金で消費者は守られる

営業保証金とは、宅建業者が供託所に供託しておくお金のことで、業者は営業保証金を供託しないと営業を開始できません。営業保証金の目的は、消費者が業者から損害を受けた場合の弁済です。

たとえば、消費者が手付を払って契約したけど業者側のミスで目的物がなくなった場合、本来は手付の返還を請求できます。しかし、返すべきお金を既に使い込んでしまったりしたら、手付を返してもらえません。

こうした時に、損害をうけた消費者は供託所で営業保証金から弁済を受けることができるわけです。宅建業者は契約の成立前に「どこの供託所にお金を供託しているか」を伝えないといけないので、一般の人でも「弁済を受けれることを知らなかった」「供託所がどこかわからなかった」なんて事態にはなりません。

基本的なイメージがついたら、宅建で重要なポイントとなる「供託」「還付」「取戻し」の3つについて順番に見ていきましょう。

営業保証金の供託

どこにいくら?

全国にある供託所ですが、業者は主たる事務所の最寄の供託所に全額をまとめて供託しないといけません。供託すべき金額は「主たる事務所で1000万円」「その他の事務所1カ所につき500万円」の合計額です。

案内所や事務所の場所などは、供託する金額には関係しません。また、本店と支店の最寄の供託所が違う場合も、本店の最寄の供託所に合計額を供託する必要があります。

供託する全額はすべて金銭である必要はなく、有価証券でも可能です。有価証券で供託する場合には、その種類によって金額の評価が変わります。評価基準は以下。

①国債証券 → 額面の100%

②地方債証券、政府保証債券 → 額面の90%

③それ以外の有価証券 → 額面の80%

なお、金銭と有価証券を組み合わせて供託することも認められています。


誰が確認する?

宅建業者が営業保証金を供託したことを確認するのは免許権者(知事か大臣)の役目です。そこで、各業者は免許権者への届出をしないといけません。

供託後に届出をして、その後でなければ開業はできないのです。仮にすでに開業していて、事務所の新設をする場合でも、届出の後でないと新しい事務所での営業を始めることはできません。

いずれの場合でも、届出後ならただちに営業は開始できます。

特に難しい話ではないですが、ひっかけ問題が多いので過去問で色々なひっかけパターンを見ておくといいでしょう。


催告と取り消し

免許を受けて営業保証金を供託して届出をしてようやく営業開始となるのですが、免許を受けたにもかかわらず供託しない業者がいては困ります。

そうした業者に対して、免許権者は催告をしないといけません。

催告の対象は「免許を与えてから3ヶ月以内に供託の届出をしない業者」で、免許権者は催告後1ヵ月以内に届出がないと免許を取り消すことも可能です。


補完替え

補完替えというのは、本店の移転などを理由に最寄の供託所が変わった場合、元の供託所に営業保証金の移転をお願いする手続きです。手続きといっても最初に供託していた供託所への請求だけで、他に特別なことをする必要はありません。

ただし、保管替えは最初の供託所に金銭だけで営業保証金を供託している場合のみ可能です。つまり「有価証券だけの供託」や「有価証券と金銭を混ぜて供託している場合」には、保管替えはできません。

こうしたケースでは、移転した本店の最寄の供託所に営業保証金を供託し直す必要があります。そして新しく供託した後で、前の供託所から営業保証金を返してもらう形になるわけです。

先に前の供託所から返してもらって、その後で新たな供託所に供託し直したりはできません。ほんのわずかな間とはいえ、営業保証金が供託されていない状態は認められませんので、二重供託が必要になるのです。

なお、保管替えでも二重供託でも、手続きは本店の移転後、遅滞なくおこなう必要があります。

保証金の還付

宅建業者から損害を受けた消費者は営業保証金から弁済を受けれますが、この弁済のことを還付といいます。還付は供託所から受けるものなので、業者が破産していても免許がなくなっていても関係なく受けられます。

ただし、弁済を受けれるのは宅建業の取引による債権のみです。つまり、相手が宅建業者でも車での事故や広告業など、取引と関係ないものは還付を受けられません。

また、営業保証金の範囲を超える弁済は受けれない点も注意です。

たとえば、債権が3000万で、供託されている営業保証金が2000万円といった具合に営業保証金が不足している場合は、その範囲内でしか還付を受けることはできず、不足分は業者の他の財産を探す必要があります。


追加供託

消費者が無事に還付を受ければめでたしめでたしですが、供託所は還付した分お金が少なくなっています。当然、業者が不足分を追加供託する必要があります。

追加供託の額は元の供託に戻るようにしないといけません。期限は免許権者から不足通知(足りないから供託しなさい)を受けてから2週間以内となっています。

「不足分が500万円だから支店を一つ潰して埋め合わせ」といったことは認められません。

保証金の取戻し

取戻しとは、宅建業者が営業保証金を供託所から返してもらうことです。廃業をはじめ、免許の取り消しなど、供託する必要がなくなった場合には取戻しができます。

とはいえ、取戻しよりも損害を受けた消費者への還付が優先されるべきですから、取戻しをする時には業者は6ヶ月を下らない期間を定めて公告をしないといけません。

要するに、ある程度の期間を決めて「還付を受けれる人は言ってください」と広く伝えてから、残った額を取り戻せるわけです。

ただし、「二重供託」「保証協会への加入」「取戻し原因から10年が経過し、債権が時効消滅した場合」こういったケースでは、例外的に公告なしで取戻しができます。