未成年者・成年被後見人・被保佐人と契約した相手方の催告権と法定追認

制限行為能力者と契約した相手方の保護

制限行為能力者は保護されるべきですが、あらゆる場面で優先されると契約相手も困るケースが多々あります。

たとえば、子供が勝手にウソをついて契約したりした場合まで、制限行為能力者だからどうのこうの言われてもそうは問屋がおろさないわけです。

ですから、制限行為能力者と契約した相手方にもある程度の権利があたえられています。

相手方にとって一番基本となる権利は催告権で、これは保護者(親などの法定代理人)に対して「追認するかハッキリして」と催告できる権利です。ようするに、契約を認めるかどうかの答えを保護者に対して求めることを許される権利となります。

答えるまでには一定の期限が設けられ、それを過ぎると契約は追認されたことになります。

また、契約した制限行為能力者が被保佐人だった場合には、保護者(保佐人)の代わりに被保佐人本人に対して「追認をもらってきて」と催告可能です。ただし、1ヶ月以上の期限を設ける必要があり、期限を過ぎても追認がない場合には契約は取り消されます。

判断能力のある保護者に追認を求めても答えがない場合は「何も言わないのは認めるのと一緒」と考えられ追認されたことになりますが、被保佐人本人は追認できるわけではありませんし、制限行為能力者であるがゆえに、催告しても答えがないのは仕方ない面もあります。

ですから、保佐人本人への催告期限を過ぎた後には契約は取り消したものとみなすようになっているわけです。

催告権以外で契約の相手方を保護する意味では、制限行為能力者の取消権が消滅するパターンがあります。

制限行為能力者の取消権が消滅するパターン

ウソをついた場合

制限行為能力者が嘘をついた場合、保護対象ではなくなり取消権を失います。たとえば、未成年が「自分は20歳以上です」といってタバコを買って、後で「実は違いました」と言っても取り消しはできないわけです。

「身分証明書を確認しよう」という現実的な話はともかく、ウソをついている前提で契約をする人はいないわけですから、嘘をつかれたら相手方を保護する必要があります。


行為能力者になってから5年後、または契約後20年後

行為能力者になるというのは、言い換えると制限行為能力者ではなくなることです。具体的には、未成年者が成年になった時(年齢だけでなく婚姻もある)や後見開始の審判や補佐開始の審判が取り消されたときがあります。

ただし、行為能力者になって即座に取消権をなくすわけにもいかないので、5年経過した場合と定められています。

一方、制限行為能力者のままであっても永久に取消権があると、相手方の保護がゆるすぎます。そのため、契約してから20年たった場合も取消権は消滅して取り消しできなくなるのです。

ここらへんの理屈は比較的わかりやすいのではないでしょうか。

最後に、相手方の保護で試験でも重要となるのが法定追認です。

保護者の行動で成立する法定追認

制限行為能力者が1人で勝手にやった契約は取り消せるわけですが、保護者(法定代理人や保佐人)が契約の履行を請求した場合には法定追認となります。

たとえば、未成年のドラ息子が親に内緒で車を購入した時、親が業者に「いついつを納車日にして」と言うと、契約を認めたと考えられるわけです。「納車日いつにして」というのは車の引き渡しの請求、つまり契約の履行の請求となります。

ですから「親も契約を認めた=追認した」となるわけです。

法定追認は言葉のイメージ通り、法律上追認したとみなしても不思議ではない意味を表していて、保護者の履行請求以外にも「こちら側からの契約の履行」「契約によって得た物の第三者への譲渡」があります。

車の例で言うと、親が車代を払ったり車を他の人にあげたりしても「息子が車を買うという契約を認めた」と考えられ、法定追認となるわけです。

ちなみに法定追認は原則として、保護者の「履行」「請求」「譲渡」で成立します。つまり、制限行為能力者本人が請求したり履行しても法定追認とはならず、契約も取り消せるわけです。

しかし、未成年者が成年になってから「履行」「請求」「譲渡」のいずれかをおこなうと法定追認が成り立ち、取消権も消滅します。

法定追認の問題を解くときは、保護者かどうかと本人の立場も考えて取り組むようにしましょう。