損害賠償請求の原則と予定額および金銭債務で覚えておきたいポイント

損害賠償請求の原則

「損害賠償を求める」と日常でも聞くことはあるため、言葉の意味自体はなんとなくわかるかと思います。

債務不履行(履行遅滞や履行不能)によって損失を受けた場合、請求すれば相手にお金を払ってもらうことができます。

この「お金で払ってもらう」というのは意外とポイントで、賠償(弁償してもらうこと)は金銭で支払うのが原則です。あくまで原則ですから特約がある場合は変わりますが、物でもOKのような表現が出たときは気を付けておきましょう。

賠償が金銭での支払いを原則とするのに対して、債務には「家の引き渡し」などの物を渡すケースと「借金」などのお金を払うケースがあります。

特に覚えておきたいのはお金を払うケースで、覚えておきたいルールがいくつかあります。

金銭債務のポイント

借金の支払いなど、お金を払う債務のことを金銭債務といいます。言葉はそのまんまなのでわかりやすいのではないでしょうか。

金銭債務に履行遅滞があった場合、債権者は原則として年5%の利率で損害賠償を請求できます。

5%の数字は当事者同士の約束で変えれますが、それよりも大事なのは実害に関係なく5%しかもらえない点です。つまり、事前に5%と決めていたら、実際の損害が大きかろうが小さかろうが5%の賠償になります。

また、金銭債務は不可抗力を原因とした場合でも履行遅滞扱いになる点も要チェックです。故意も過失もなく、何も悪くなくても支払いが遅れたら履行遅滞になってしまいます。

このように通常の債務とは毛色が違う金銭債務ですが、あと2つ覚えておきたい特徴があります。それが「履行不能なし」「実害証明不要」です。

まず「履行不能なし」ですが、文字通り履行不能(お金ないので払えません)といった状態はないという意味になります。

「いやいや、財布も口座もスッカラカンになったら払えないし」と思われるかもしれませんが、これは払えない状態と定義されていません。ようするに「お金が払えない状態なんてない」と決められているので、履行不能はないのです。

納得できるかどうかはともかく、これが法律上の解釈ですから注意しましょう。

続いて「実害証明不要」ですが、これも言葉のイメージ通りで、実質の被害がどれだけあったかを証明する必要がないのです。損害が大きいことを証明しても逆に小さいことを証明しても、結局のところ請求できる賠償額は同じということを考えるとわかりやすいと思います。

金銭債務は異質なものですから、問題文でも注意深く確認するようにしましょう。

損害賠償額の予定

実害の大小に関係なく賠償額が一定ならば、もしもの時にはいくら払うかを事前に決めておくこともできるわけです。これを損害賠償額の予定といい、違約金の決まりなどが該当します。

あらかじめ決めた損害賠償は債務不履行時に支払われるわけですが、実害に関係ない点は上記の金銭債務の場合と同じです。

現実にも「裁判を起こして損害賠償がどうのこうの」といった話がよくありますが、もしも損害賠償を予定していた場合は裁判所でも予定額を増やしたり減らしたりはできません。

ようするに「約束破ったら1万な!」と決めたら、2万円損しても1円も損しなくても請求できる賠償額は1万円なのです。

なお、賠償額の予定は債務不履行が現実に起こる前であれば契約時でなくても問題ありません。あまり褒められた話ではありませんが「こいつ約束破りそう」と思ってから、実際に約束を破る前にいくら払うかを決めてしまうこともできるわけです。