契約解除の流れとその後の現状回復義務および手付解除の条件

契約解除までの流れ

相手が約束を破った時(債務不履行)には、損害賠償請求とは別に契約の解除をすることもできます。相手方の債務不履行を理由とするので当然といえるかもしれませんが、相手から許可や承諾をもらう必要はなく、一方的に契約をなかったことにすることも可能です。

ただし、債務不履行のタイプによって解除するまでの流れは変わります。

まず、履行遅滞(遅れている)の場合は、遅れたからといってすぐに契約の解除はできません。相当の期間を決めていつまでに履行するよう催告をし、それでも履行しない場合に解除可能です。

相当の期間というのが曖昧ですが、これは契約の種類やその時の状況によって変わるので一概にはいえません。約束を破った人に「じゃあ、1週間まつからそれまでにやって」と伝えて、それでもしない時は解除できると覚えておくといいでしょう。

盲点となるのは「早くしろ」とか「3分間まってやる」といった、期間の定めがなかったり短すぎる場合でも催告は有効な点です。しかし「3分待ったからこの契約は解除」とはできず、どのみち相当の期間待つ必要があります。

こうした催告を「期間の定めなし」「期間が不相当に短い」といい、判例もあります。解除に関する判例は他にもあるので、テキストでおさえておくといいでしょう。

一方、履行不能の場合は目的物がないわけですから「早く」と伝えたところでどうしようもありません。ですから、履行不能になったら直ちに解除可能で催告も不要となります。

また、催告時に「何日後に履行しないと解除します」と伝えておいたり、契約の段階で「もしこういうことがあれば解除します」と事前に決めておくと、意思表示がなくても解除は可能です。

なお、いずれの場合でも一度解除の意思表示をしたら撤回はできません。

解除の効果

意思表示による解除にしても自動的に解除となった場合でも、契約はなかったことになります。これは言い換えると最初から契約が存在しなかったも同然ということですから、契約の当初にまで解除の効果は及ぶということです。

解除するまでの期間にお金を少しだけ払ったり何か物を受け取ったりしているケースも少なくないので、解除があればそれらを返して契約当初の状態に戻す必要があります。これを現状回復義務といいますが、注意したいのは代金を返還する時の利息です。

受け取った代金を返還するというのは借金を返すのと同じような位置づけとされており、利息をつけないといけません。解除があってからではなく、代金を受け取った時からの利息が必要という点が特に注意です。

お金を受け取った側が利息をつける必要があるのですから、通常は購入する側の身勝手では解除はできません。しかし、手付を交付している場合には話が変わってきます。

手付解除のルール

5000万の家を買うと決めて契約したけど、その後で似たような家が1000万で手に入る情報をキャッチしたら、最初の契約をキャンセルしたいですよね。ご都合主義のような話ですが、こうした時の解除を許すのが手付というものです。

5000万の家を購入する時に手付として500万を支払っておき、それを放棄すれば契約解除も認められます。「お金返さなくていいから契約をなかったことにして」といったニュアンスです。

これは買主側だけではなく売り手にも同じことが言えますが、売主の場合は手付の倍額を支払うことが解除の条件となります。売主が解除したいケースは、5000万の家を1億で買う人が現れたときなどです。

大事なのは買主の手付の放棄と売り主の手付倍返しですが、それぞれ微妙にルールが違います。

放棄の場合は「手付いりません」と意思表示をするだけでOKなものの、倍返しの時は実際にお金をもっていって解除を申し出ないといけません。実際にお金をもっていく行為を「現実の提供」といい、これが手付倍返しによる解除の条件となります。

手付による解除は放棄か倍返しがあればできますが、相手が代金の一部を払ったりしたらできません。履行の着手といって、契約通りの行動に出たときはたとえ手付があっても解除はできなくなるのです。これは自分が着手した時は関係なく、あくまで相手が着手した時ですからその点もおさえておきましょう。

手付に関してもう一つ重要な点は手付の返還です。

一方的なご都合主義による解除ではなく、お互いに「やっぱりなかったことにしよう」と納得した上での契約解除は合意解除といいます。

この時は、どちらかが迷惑をかけたわけではありませんから、買主は手付をそのまま返してもらえます。放棄や倍返しも不要ですし、誰も悪くないので損害賠償などもありません。

なお、手付による解除と債務不履行による解除は別物ですから混合しないように注意です。