賃貸借契約(賃貸人、賃借人の義務・契約の終了・譲渡・転貸)と不動産賃借権の対抗力

賃貸借契約における当事者の義務

賃貸借とは、賃料を支払って物の貸し借りをする契約のことをいいます。物はアパートなどの不動産に限った話ではなく、レンタルDVDなどの動産でも賃貸借契約になります。物を貸す方を賃貸人といい借りる方を賃借人といいますが、契約においてそれぞれが果たすべき義務を覚えておくのが大切です。


賃貸人の義務

賃貸借契約の目的物の一部が壊れたりした場合、賃貸人は修理しないといけません。たとえば、賃貸アパートに住んでいて窓ガラスが割れたりしたら、修理するのは借りた人ではなくて貸した人の義務となるわけです。

しかし、大家さんと連絡がとれずに修理をお願いできないなんてケースもあるかもしれません。こうした時は借りた人が修理することも認められています。

修理を自力でやるにしてもどこかにお願いするにしても、借り手はかかった費用を貸し手に請求できます。この費用は窓ガラスの修理にかかったもの、つまり、家の機能を保つために必要な費用ですから必要費と呼ばれます。

必要費を借り手が負担した場合、直ちに全額を貸し手に請求できる点も覚えておきましょう。

必要費とあわせて大切なのが、有益費です。

有益費は必要費とちがって、家に住むために絶対必要なことにかけたお金ではありません。畳替えとか壁紙の張り替えなど「しなくても住めるけど、したらもっと快適♪」といったものにかけた費用が有益費に該当します。

そういったことから、借り手が有益費を負担したとしても直ちに請求とはいきません。しかし、賃貸借契約終了時に返してもらうことはできます。いくら返還されるかは貸主が決めることで、全額あるいは現存する増加額(賃貸借終了時の価値)から選ばれます。


賃借人の義務

賃貸人に対して賃借人にもなすべき義務があります。宅建で特に重要なポイントは「宅地建物の賃料の月末払い」「不可抗力によって目的物が滅失したら、賃借人は減額請求可能」の2点です。

説明不要かもしれませんが、賃料は後払いが原則となっていて、特に宅地建物だと月末の支払いを借り手は守らないといけません。

「不可抗力によって目的物が滅失したら、賃借人は減額請求可能」というのは、借りているアパートが災害で半壊した時などは「家賃を半分にしてよ」と請求できるという意味で、滅失した部分の賃料を減額というのがポイントです。

つまり、半壊に対して「ボロボロだから家賃は今までの5分の1でお願いします」といった、滅失部分以上の減額を求めても認められません。

賃貸借契約の終了

賃貸借契約が終了するケースは4つあります。

1つ目は期間の満了で、20年が契約期間の限度とされています。たとえ20年を超える期間を定めていても、自動で20年に短縮されます。

2つ目は解約の申し入れです。借り手、貸し手のどちらからでも解約を申し入れることができますが、申し入れ後すぐに賃貸借終了とはなりません。いつ終わるかというと、土地なら申し入れから1年後、建物なら3ヵ月後となっています。

なお、上記2つの賃貸借終了パターンは借地借家法で例外も定められているので、これだけで勘違いしないように注意しておきましょう。

話を戻して、終了条件3つ目は契約の解除です。これは、債務不履行や合意解除などによる終了が該当します。

最後は、目的物の全部滅失です。賃貸借契約の目的物がなくなったのですから、借りるも貸すもできません。「家なくなったから貸し借りなしで」とわざわざ意思表示をする必要もなく、自動で賃貸借契約は終了します。

不動産賃借権の対抗力

不動産賃借権の対抗力とは、たとえば借りた土地に家を建てている時に、貸し手が第三者に目的物を譲渡してしまった場合の借り手の「いやいや、土地を借りたのは自分だから家どかさないよ」という主張を指します。

対抗力があるならば目的物を渡す必要はなくなるわけですが、対抗力が認められるかは土地か建物かで変わります。


土地の場合

土地を借りた権利、つまり借地権を主張できるのは「借地権の登記」「借地上の建物の登記」「借地上の建物の掲示」の3つの場合です。

借地権の登記は、地上権か賃借権かに関係なく登記しておけばOKですが、たとえ登記がなくても借地上の建物を自分の名義で登記しておけば対抗力が認められます。つまり、借りた土地に家を建てているならば建物を自分の名義で登記しておけばいいのです。

「借地上の建物の掲示」というのは、登記した建物が滅失した時に「この土地には自分名義の建物があった」と示すことです。

「滅失日」「建物を特定する事項」「建物を建てなおす旨」を記載した立札などを立てておけば、掲示として対抗力が認められます。ただし、この場合の対抗力は滅失から2年間です。建てなおすつもりなら早くということでしょう。


建物の場合

借りていた建物が譲渡された場合の賃借権の対抗力は「登記」と「引き渡し」の2つです。

建物賃借権が登記されていれば登記はOKですが、ない場合は引き渡しを受ける必要があります。これは借り手が貸し手に引き渡すことを指していて、たとえばアパートなら、大家さんから引き渡されて住んでいるだけで賃借権を主張できるのです。

目的物の譲渡・転貸

転貸というのはようするにまた貸しのことです。借りた家を勝手に別の人にあげたり貸したりできないのは当然とも思えますが、賃貸人が承諾している場合は認められます。

これは譲渡の場合も同様で、譲渡・転貸は貸し手の承諾が必要と覚えておくといいでしょう。

転貸が成立した場合、貸し手は借り手だけでなく転借人(また貸ししてもらった人)にも賃料を請求できます。

注意しておきたいのは「人の物を貸しているのか?」「自分の物を貸しているのか?」という点です。たとえば、土地を借りてそこに建てた家を貸す場合は、家は自分の物ですから土地の持ち主に承諾を得る必要はありません。

また、賃貸人の承諾を得ずに無断で譲渡や転貸がおこなわれてもすぐに契約の解除はできません。

借りた人が無茶なことをしない限りは無断転貸や無断譲渡でも解除はできないわけですが、このことを判例で「背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるとき」と表現されていたりするので、問題文で出てきたら意味を理解できるようにしておきましょう。